<無辺(むへん)の落木は蕭蕭(しょうしょう)として下(お)ち/不尽(ふじん)の長江は滾滾(こんこん)として来たる/万里悲秋 常に客と作(な)り/百年 多病(たへい) 独り台に登る>。中国・唐代の詩人、杜甫(とほ)の名作「登高(とうこう)」の一節である◆木々からは枯れ葉が落ち、長江の水は盛んに流れる。故郷から遠く離れた悲しい秋に、いつも旅人の身の私は生涯病気がちで、一人で高台に登る-。秋と自らの衰えを重ねて、ひときわ悲壮感がにじむ詩である。9月9日の重陽(ちょうよう)の節句にうたったものだ◆中国では奇数は陽、偶数は陰と考えられ、陽数最大の数「9」は最も縁起がいい数字。それが重なるおめでたい日に、家族や友人とともに小高い丘に上り、菊酒を酌んで長寿や無病息災を祈る風習があった。それを「登高」と呼び、日本でも広く行われたが、次第に廃れていった◆佛坂勝男さんの『佐賀歳時十二月』によると、今は絶えてしまっているが、鳥栖市周辺ではこの節句に久留米の高良山などに登って酒宴を催し、栗飯や菊酒を楽しんだという。今、高良大社のおくんちは10月9日からで、旧暦だとちょうど9月9日ごろ。その名残はある◆「菊の節句」や「栗の節句」の異名もある。先日、はしりの七山産の栗を手に入れ、栗ご飯と甘露煮を食し、えも言われぬホクホクした甘味を堪能できた。これから秋本番。季節を愛(め)でる余裕も持ちたいものだ。(章)

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