孫文ら中国建国の礎となった革命烈士や、佐賀ゆかりの郭沫若(かくまつじゃく)ら文学者が日本に滞在したり留学したことは知られている。その足跡をたどった紀行文が昨年出た。ノンフィクション作家・譚?美(たんろみ)さんの『帝都東京を中国革命で歩く』。一読し、いつか行ってみたいと思っていた◆先日、上京の折、後に首相となった周恩来の石碑が立つ神田・神保町の愛全公園を訪ねた。「周恩来ここに学ぶ」とある。中国人向けの日本語学校だった東亜高等予備学校の跡だ。裏通りにある目立たない一角で、本に教えてもらわなければ縁がなかった◆周は1917年に来日した。それから100年になる。明治維新を成し遂げた日本から成功の秘訣(ひけつ)を学ぼうと、明治後期から大正にかけ、日本に留学生が大挙して押し寄せた。周もその1人で、資金の不足や受験に失敗した苦悩を抱え、やがて日本を後にする◆神田には、周が通った中華料理店が今も健在である。今年は日中国交正常化から45年。その共同声明は、周と田中角栄首相が署名した。後年、周は日本人に「神田の古本屋街はまだ残っていますか」と尋ねたという。若き日の郷愁からか、忘れがたいものがあったのだろう◆今、日中関係は必ずしも順調とはいえない。しかし、確かに近代化の中で手を携えた時代があった。覚えておきたい歴史である。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加