日本の未来におけるJAの役割について講演する農林中金総合研究所の皆川芳嗣理事長=佐賀市の千代田館

 佐賀県内のJAグループ役員を対象にしたセミナーが佐賀市で開かれた。農水省の元事務次官で農林中金総合研究所理事長の皆川芳嗣氏が、人口減少が進む今後の日本における農業の可能性、JAが果たすべき役割について語った。要旨を紹介する。

 日本は人口減少という大きな課題に直面し、かつてのように貿易立国として世界のものづくりを担うのは難しい。金融、技術も国を引っ張るだけの産業にはなり得ない。では農業はどうか。数年前にTPP(環太平洋連携協定)の議論で、「農業は日本のGDP(国内総生産)のたかだか1・5%しかない」と言った政治家がいた。だが、フランスやアメリカでもGDPに占める1次産業の割合は1~2%。あんなに農村を抱えている中国でも10%しかない。

 1・5%はあくまで原料の世界。2次、3次産業まで付加価値を足すと、生産額ベースで国の1割を農業から派生した分野が稼いでいる。地方に行くと、そのウエイトはさらに高い。地域社会を支え続ける意味でも、農業やその関連産業には大きな可能性がある。

 ただ、家業としての農業経営の持続可能性がなくなっていることは否定できない。後継者が成り立つ事業にするには、規模拡大や複合化はある程度避けて通れない。

 労働のピークを経営の中でどう分散させられるか、マネジメントをJAも一緒になって取り組まなければならない。農地基盤の条件整備、農地の権利問題といったことも今後、JAがやる必要があるだろう。

 日本の市場規模は必ず小さくなる。地域にこだわりつつ、“他流試合”に挑むのも大事だ。福岡と東京のJAさが系統の店(季楽)は、他の地域の需要を食って佐賀の農産物が売れている。外に打って出る取り組みを加速させる必要がある。東アジアは必ず成長し、消費社会になる。インバウンドを生かさない手はない。

 地域全体を良くするためには、いろんな人たちと連携し、包み込むという考えが重要だ。JR九州の「ななつ星in九州」は、九州の風土と皆さんが丹精込めて作った食材がなければ成功しなかった。旅をする理由はその場所でいろんなものを食べたり、体験したりできるから。連携相手としてもっと深くつながれるのではないか。

 農業と福祉の連携もある。農業分野の一部でも、JAから福祉サイドに手を差し伸べるのは大きな社会的意義がある。障害者雇用は日本の企業の責務だが、企業本体の業務で雇用の場を提供することが難しい場合もある。

 企業が特例子会社をつくり、その子会社の事業として農業や園芸に取り組めば、法定雇用の人数に組み込める制度がある。農業のノウハウや販路を生かし、地域のためにより積極的に役割を果たすJAにしていただければありがたい。

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