■「ピンチはチャンス」感謝忘れず一緒に頑張る

 私は唐津市呼子町で貸切バス事業を営んでいる。家業を継ぎ始めた3年前、私はバスを運転中、対向車の居眠り運転による正面衝突事故に巻き込まれた。

 乗客の半数以上が重軽傷を負い、私も救急車で運ばれた。幸い命に別条はなかったが、この出来事はニュースで取り上げられた。創業2年目、吹けば飛ぶような会社。「自分のせいで終わったかもしれない」との思いが頭の中を駆け巡った。

 その時、当時の商工会青年部長から、「大変やろばってん、しっかり前向いて頑張らないかんよ」と連絡があり、涙があふれた。周囲からの何気ない言葉に、私は勇気づけられた。

 多くの方に支えられて生き、仕事ができていると強く感じることができた。感謝の気持ちを忘れず、できることを精いっぱいやっていこうと心に決めた。

 「自分にできることは何だろう」。最初に思い浮かんだのが、自分の仕事だった。事故後も利用してくれるお客様に、満足して笑顔になっていただくために、何よりも大切なのは安全だと改めて認識した。

 昨今、バス運転手の高齢化による疾病や乗務員不足に伴う過労運転が原因の事故が後を絶たない。かつて会社の20代は私だけで、その上は50代、60代という状況だった。若い世代がこの仕事に興味を持ってくれるよう、大型二種免許の取得費用は会社が負担する方針を掲げ、積極的に初心者向けの募集をかけた。地元の先輩や後輩が一人、また一人と入社してくれた。

 そんな中、昨年は熊本地震の影響で九州自動車道が寸断された。ほとんどの仕事がキャンセルになり、会社存続の危機と言っても過言ではない状況になった。心配してくれる人たちに、「熊本は必ず復興する。その時に売り上げを伸ばせばなんとかなる。ピンチをチャンスに変えてやる」と言い続けた。

 九州の大動脈である九州自動車道が復旧した今、私たちバス会社は、被害の出た各地を潤すため、これからも走り続ける。「前を向こう。一緒に頑張ろう」。私を救ってくれたこの言葉を、今度は私が言う番だ。

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