「世界激変、どうなる日本の景気」を演題に講演する経済ジャーナリストの大西良雄さん=唐津市の唐津シーサイドホテル

唐津土建工業社長 岩本 真二さん

■世界激変、どうなる日本の景気 人民元の動向注視必要

 佐賀新聞社が主催する鳥栖政経セミナー・唐津政経懇話会(7月28、29日)で、経済ジャーナリストの大西良雄さんが「世界激変、どうなる日本の景気」をテーマに講演した。日本や世界の景気に最も大きな影響を与える要因に中国経済の失速を挙げ、人民元の動向を注視していく必要性を強調した。アベノミクスの問題点も指摘した。講演要旨を紹介する。

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 イギリスのEUからの離脱で金融、株式市場、為替市場は一時動揺した。一番混乱したのは日本のマーケット。だが、日本とイギリスの経済関係は全体の1%程度しかない。投資家心理を示す「VIX恐怖指数」は昨年8月や今年2月のチャイナショックより低く、急速に低下している。イギリスのEU離脱によるリスクそのものは一時的、心理的なものと言える。

 世界にとって最も大きなリスクはやはり中国だ。中国は今やアメリカに次ぐ世界2位の経済大国で、貿易総額は世界一。中国の経済悪化は世界に大きな影響を与える。

 チャイナリスクは小康状態を保っているが、予断を許さない状況だ。人民元がじわじわ下落の方向に向かっている。中国は、リーマンショック後を支えた不採算の事業が山積みしている。企業は過剰生産能力を抱え、これが稼働しなければ不良資産になる。成長率が低下すると同時に持ちこたえられなくなり、大停滞に陥る。今のところリスクは顕在化していないが、人民元の相場は注視する必要がある。

 IMFが出した2016年の世界の成長率予測はアメリカがプラス2・2%、ユーロ圏1・6%、イギリスですら1・7%だが、日本は0・3%。世界の先進国を見ると、一番成長率が低いのは日本。リスクは日本自身にある。低成長とデフレに再び突入する危険がある。安倍政権は世界経済が悪くて日本は悪くないと言っているが、それは大きな間違いだ。

 アベノミクスがスタートして1年くらいは景気が良かったが、2014年以降は減速傾向にある。アベノミクスの最大の成果は円安。円安は輸出企業の業績に反映されたが、輸出量自体は増えておらず、下請けの生産量は増えていない。景気が良くなった風に見えただけで、経済の実態そのものを良くしたかは疑わしい。

 6月の完全失業率は3・1%で、有効求人倍率は1・37倍。全県で「1」を超えた。景気が良くなったからだというが、じゃあなぜ経済対策を打ち続けているのか。

 人手が足りないのは、単純に労働力人口が減っているからだ。特に15~34歳の若年労働力は、1997年に比べて2015年は560万人減っている。若年労働力が減少し、雇用を逼迫(ひっぱく)させている。中小企業、特にパートなどに依存している産業は深刻だ。若い人の減少は、経済にとって最大の成長制約要因である。政府が「景気は良くなった」と言っている限り解決しない。今から出生率を上げたって、労働力になるのは20年かかる。正しい政策を打つことが大切だ。

■講演を聴いて 唐津土建工業社長 岩本真二さん

 各種データに基づく分析を興味深く聴いた。ただリスクが中国経済、あるいは日本自身にあるのであれ、地方企業はこの経済の流れに流され、のまれていくだけなのか。人手不足は建設業、また唐津も同じで、厳しいが、人材確保のため賃金も改善している。そうしないと企業も地域も回っていかない。アベノミクスとセットである地方創生の効果を含め、選挙が終わった今だからこそ、冷静に論議することが必要だと思う。

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