仕事や学校に行かず家族以外とほとんど交流がない「引きこもり」の長期化や高年齢化が問題になっている。佐賀県は、引きこもりの人の支援対策の拠点「ひきこもり地域支援センター」を設置する。県内の実態調査や当事者に寄り添ったきめ細やかな支援体制の整備を急ぎたい。

 県内の引きこもりの人への支援は、これまで福祉や労働、教育などの関係機関が連携し対応してきたが、専用の相談窓口はなかった。実態も十分に把握できておらず、相談から自立までの一貫した支援体制の整備が課題だった。

 ひきこもり地域支援センターは、専門知識のあるコーディネーターらが、全年齢層を対象に相談や支援にワンストップであたる。家族会や医療機関などと連携し、必要に応じて家庭訪問なども行う。すでに各都道府県・政令市の68カ所にあるが、佐賀県だけが未設置だった。県は来年度のできるだけ早い時期の開設を目指し、民間委託業者を公募する。

 内閣府は昨年9月、15~39歳を対象にした調査で、「通学や仕事をせず、他人と関わる外出をせずに6カ月以上家にいる人」が、全国で推計54万人に上ると発表した。期間は7年以上が35%と、6年前の前回調査より2倍超となり、引きこもりになった年齢も35~39歳が10%と倍増し、長期化と高年齢化の傾向が顕著だった。また、全国ひきこもり家族会連合会が先月まとめた調査で、全国の自治体窓口が相談を受け対応した年齢は40代が最も多く、50代も目立った。ここでも高年齢化が裏付けられた。

 「長期化と高年齢化」。引きこもりは年齢が上がり、期間が長引くほど解決が難しくなると言われる。高年齢化の課題が親亡き後の暮らしだ。親の年金に頼っていた子どもは親が亡くなった後、生活に行き詰まる可能性が高い。ただ、40代以上では当事者だけでなく家族も相談を迷ったり隠したりする例も多いとされる。周囲が早い段階で気付き、長期化しないうちに支援の手が差し伸べられることが大切だ。

 県内の引きこもりの実態調査として県は、地域の実情に詳しい民生委員や児童委員を対象にアンケートを実施しており、3月中にも結果をとりまとめる。効果的な支援を行うためにも、地域住民の理解を得ながら、幅広い年齢層を対象に丁寧な調査が必要だろう。

 一方で、支援は当事者に寄り添ったものでなければならない。引きこもりは、他者との関係を絶つことで、これ以上傷つかないようにする自己防衛の手段ともいえる。支援機関に出向くのをためらう人も少なくない。やっとの思いで支援機関に出掛けても、無理やり外に連れ出そうとしたり、価値観の押しつけを受けたりの意に添わない対応で、再び心を閉ざしてしまうケースもあるという。個々の事情に応じて、じっくりと向き合う支援が求められる。

 当事者や親の高年齢化、生活困窮が進む中で、社会とつながれずに救済を求めている人や、深刻な状況に追いやられている人たちが、どうすれば適切な支援を受けられるのか。都道府県で最後発となった支援センター設置では、先進地の取り組みを参考にしながら、よりよい福祉や支援が行える体制を準備したい。(田栗祐司)

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