水俣病患者と認定される前に、訴訟で原因企業から賠償金を受け取った場合、認定後に公害健康被害補償法(公健法)に基づく障害補償費も受給できるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は8日、「賠償金で損害の全てが補填(ほてん)されている」として、受給を認めないとの判決を言い渡した。熊本県の不支給決定を取り消した福岡高裁判決を破棄し、患者側の敗訴が確定した。

 訴えたのは大阪府東大阪市の川上敏行さん(92)。1973年、熊本県に患者認定を申請したが、結論が出ないため、84年に国と県、チッソに賠償を求める水俣病関西訴訟に参加。2004年に勝訴が確定し、チッソから賠償金850万円を受け取った。11年になって水俣病患者と認定され、公健法に基づく補償を県に請求していた。

 第2小法廷はまず、障害補償費は迅速な被害回復のため原因企業に代わって支給され、かかった費用は最終的に企業に負担させる仕組みになっていると指摘。「患者が健康被害について企業に訴訟を起こし、企業が賠償義務を果たした場合、県は障害補償費の支給義務を免れる」とした。

 その上で「賠償金は慰謝料だけで、経済的損害は含まれていない」とする川上さん側の主張を退け、県の不支給決定は妥当だと判断した。

 認定患者は、チッソからの一時金(1600万~1800万円)を含む補償か、公健法に基づく補償のいずれかを受け取ることができる。川上さんは「行政に責任を果たしてほしい」との思いから県に補償を求めたが、13年に不支給の決定を受けた。

 熊本地裁は15年3月、川上さんの訴えを退けた。福岡高裁は16年6月に「賠償金で損害が全て穴埋めされたとは言えない」と決定を違法と判断。県が上告していた。【共同】

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