愛媛県の四国電力伊方原発3号機が再稼働した。鹿児島県の九州電力川内原発などに続いて5基目であり、玄海原発(東松浦郡玄海町)と同じプルサーマルでは唯一の再稼働となった。

 伊方原発は、九州に向かって延びる佐田岬半島の付け根に位置する。最大の懸案は大規模な活断層「中央構造線断層帯」が、近くに走っているという事実である。

 熊本地震は震度7クラスが連発し、これまでの地震学の常識をひっくり返した。熊本地震の影響を受けて中央構造線断層帯が活性化しないか、ふたたび、同じ規模の地震が起きないかが気がかりだ。

 断層帯を九州へ延長した先には、稼働中の川内原発がある。こちらは新たに就任した三反園訓知事が「川内原発を停止させて点検、調査させる。県民の代表だから言う権利がある」と、九電に一時停止を迫る構えを見せている。

 法的な裏付けを持たないにもかかわらず、三反園知事が強気なのは、巨大地震を受けて「安全性は大丈夫なのか」「避難計画は本当に機能するのか」という住民の不安の声が根強いからだ。

 伊方原発の場合も、その立地する地形を考えれば、避難計画の実効性が課題のひとつに挙げられる。岬の西側の住民は海上ルートで大分県側に逃れるなどとしているが、東京電力福島第1原発クラスの事故が起きたときに、果たして船舶の確保などは間に合うのか。命を守るための計画が、絵に描いた餅では困る。

 原発関連施設にしても、重大事故時の拠点となる対策所が心もとないという指摘が出ている。最大100人近い作業員を収容するには手狭だからだ。しかも敷地内は高低差が大きく移動が負担で、訓練では作業員が熱中症で倒れてもいる。

 福島第1原発の事故以前、原子力行政をめぐっては、規制当局が電力会社からコントロールを受ける「規制の虜(とりこ)」に陥る構図が浮き彫りになった。いかに規制当局の独立性を保つかが議論され、その結果、現在の原子力規制委員会が発足した経緯がある。

 「世界で最も厳しい」と田中俊一委員長が胸を張る新たな規制基準が定められ、それをクリアした原発だけに再稼働を認めるという方針が掲げられた。老朽原発の運転期間を制限する「40年ルール」や、最新の科学的知見を反映させていく「バックフィット」という考え方も盛り込まれた。

 だが、現状は当初の理念に沿っているだろうか。

 40年ルールはもはや形骸化しつつある。原子力規制委員会は既に40年を超えた関西電力高浜原発の稼働延長を認めた。田中委員長は「(老朽原発も)費用をかければ技術的な点は克服できる」と寛容で、そこには例外中の例外として認めるという緊迫感はなかった。

 バックフィットにしても、十分に機能しているだろうか。今年6月、規制委で副委員長を務めた島崎邦彦・東京大名誉教授が、原発の耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」の計算式に問題があり、過小評価していると指摘した。だが、規制委は正面から受け止めようとはしなかった。

 なぜ、不安の声に耳を傾けようとはしないのか。なし崩し的に原発回帰に向かっているのではないかと強く危惧する。(古賀史生)

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