立秋は過ぎた。しかし、こう連日暑いと、水中を優雅に泳ぐ金魚がうらやましくなる。夏の季語の金魚◆ものの本によると、そのルーツは中国のフナの一種で?(ヂイ)という魚であることが遺伝子解析技術で分かってきた。本来はフナ色の?が突然変異で赤くなった個体が発見され、繁殖に手をつけた。約1800年前の中国晋の時代だ。日本には室町の頃に中国から入ってきたとの説が有力である◆江戸中期ごろまでは、特権階級の遊びの範疇(はんちゅう)だったが、次第にその飼育が庶民の間に広がった。トロイア遺跡の発掘で知られるシュリーマンが幕末、江戸のまちに入り「日本の家にはかならず庭があり、庭には水槽や、あるいは小さな庭石でふちどられ、扇型の尾をした金魚でいっぱいの、模型のような池がある」と書き残している(『シュリーマン旅行記 清国・日本』)。よほど金魚が珍しかったのだろう◆ワキンにリュウキンにランチュウ…。今、国内の種類は50ほどあるというが、金魚すくいの水槽を泳いでいるのは、赤くて小さなワキンと黒いデメキンだ。うまくすくった時の満足感は格別で、何度もビニール袋をながめ、跳びはねるようにして帰った思い出がある◆世の中が安定すると飼育が増えるという金魚。平和のシンボルかもしれない。<くれなゐの金魚まどろむ草の中>内藤八重。(章)

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