「国の事業に協力してきた人たちが10年後、20年後に困ることはあってはならない」。九州新幹線長崎ルートの開業でデメリットが生じる県南西部の在来線の長崎線。沿線の藤津郡太良町の県議が訴えた。揺れに揺れた新幹線問題の記憶がよみがえった。

 支社勤務時代、新幹線に反対する鹿島市と杵島郡江北町でつくる期成会を取材した。問題は膠着(こうちゃく)状態だったが、2007年12月、JR九州の運行の継続によって地元自治体の同意を不要とし、着工にこぎ着けた。本数の減少などで地域振興に影響を及ぼすのに、蚊帳の外に置かれてぼう然とする首長の表情を目の当たりにした。

 あれから10年。県議は駅新設の困難さを引き合いに長崎線の利便性の確保に懸念を示し、諫早湾干拓事業で一方的に開門しない方針を示した国の対応も踏まえながら「協力した人が困ったままなら政治の信頼を失う。目配り、気配りを」と求めた。

 執行部は「沿線は重要な地域であり、活性化に取り組む」と応じた。公共事業は多くの人の利益と引き替えに一部の犠牲を伴うことがある。賛否を議論するだけでなく、その犠牲を置き去りにしないための議会の役割を再認識した。

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