米国のフォード・モーターを創設したヘンリー・フォードは若い頃から機械いじりが大好きだった。電気の発明王・エジソンの会社に入り、自動車の開発を始める◆「君、それだ。君の自動車は自給式だ。自分で動力を持ち、火気やボイラーの必要もなく。煙も出ないし蒸気もいらない」。方向性に悩んでいた時、このエジソンの一言が勇気を与えたと後に自伝に記している◆自動車そのものを発明したわけではないが、性能が良くて安い「T型フォード」を考案し、馬車を買うなど夢物語だった庶民にも手の届く初めての車になった。移動の主役が馬から自動車に変わったのがこの時代。110年後の今、それ以来の転換期を迎えている◆エンジン車の終焉(しゅうえん)が見え、電気自動車(EV)の波が来た。米国と中国で環境規制が強まり、英仏政府が2040年までにエンジン車の販売を禁止すると発表、中国はEV普及を国策に掲げた。ついに巨人・トヨタもEVを避けて通れなくなり、マツダと資本提携。EVの共同開発が始動する◆しかしエンジン車に比べてEVは部品数が極端に少なく、切り替われば自動車産業界の雇用問題にもつながる。見越しての戦略が待たれるところだ。電気の普及に貢献したエジソンが車の大衆化の背を押し、今度は電気が車の動力の主役に。縁の不思議さである。(章)

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