べんがら(赤色酸化鉄)とモリブデン化合物を被覆した種もみ

「べんがらモリブデン」で湛水(たんすい)直播きした水田。根元から太く生育しており、苗を移植する従来方法と比べても遜色なく生育している=三養基郡上峰町江迎

 農研機構九州沖縄農業研究センターが、水稲栽培で省力化や生産コスト削減などの効果が期待される直播(じかま)き技術の普及に本腰を入れている。種子にべんがら(赤色酸化鉄)とモリブデン化合物を被覆することで、苗立ちが不安定だった課題を克服。佐賀、福岡両県の水田で行った実証試験では、生育、収量、生産コストのすべての面で、田植機で苗を移植する従来の栽培方法と比べて大きな差がないことを確認している。

 農業の担い手が不足する中、育苗や田植機による移植作業の時間や負担は、大規模化するほど重く、直播きは、こうした問題を解決させる技術として注目されている。ただ、初期生育の段階で枯れやすいといった難点も多く、現状は全体の作付面積の2%程度にとどまる。カルパー(過酸化カルシウム)や還元鉄を被覆して苗立ちをよくする技術があるが、被覆に手間がかかり、費用が高額という課題もあった。

 同センターが開発した「べんがらモリブデン」の被覆技術は、モリブデンが肥料成分から生成される硫化物を抑える作用があることに着目。被覆する資材量も少なく、専用機材が不要で市販のコンクリートミキサーを転用できるため、価格面で大きく優位に立つ。実証実験の中で品種を問わず効果を発揮することも確認されている。

 同センターは3、4日に三養基郡上峰町や、みやま市などの実験圃場で現地検討会を開き、自治体の農政担当者やJA、農機メーカーなどの関係者約80人が参加した。上峰町直播研究会第2直播機械利用組合(吉富隆組合長)は「カルパーだと10アール2000円ぐらいかかっていた資材費が、同225円と大幅にコストを削減できた」とメリットを強調。今年から11ヘクタールすべてで「べんがらモリブデン」に切り替えたことを報告した。

 吉富組合長は「反収目標は8俵半(510キロ)だったが、10俵(600キロ)を取る人もいる。水管理の技術や手間は必要だが、少ない人手で農地を守るには有効」と手応えを語った。

 スズメ、カモなどの鳥類や、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の食害などの課題もあるため、同機構は被覆方法や播種後の水管理のマニュアルを作成。農家への技術普及を図る。同センター水田作研究領域の原嘉隆上席研究員は「効率化が難しい中山間地や、法人化で生産規模の拡大を考えている集落営農にも有用な技術になる」と話している。

このエントリーをはてなブックマークに追加