アグリ三新の水稲防除作業。作物の団地化が進み、農地の境界線も関係なく作業を進めることが可能となった。今秋の収穫後にはあぜ道も取り払う=嬉野市塩田町

 「ここから先は全部さがびよりで、この道沿いは夢しずく。川沿いは飼料米にして、酒米はこっち、今年はここが大豆」-。農事組合法人「アグリ三新」の江口敏春代表(75)が、事務所の壁に据え付けられた集落の農地図を赤線で区切り直すと、地図の上に“広大な農地”が現れた。

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 経営面積は三ケ崎、新村両地区の約40ヘクタール。平たん地域の水田地帯だが、20~40アールごとに所有者はそれぞれ違い、細かくあぜで区切られている。かつて農家はあちこちに散らばった田んぼを行き来して、そのたびに機械を上げ下ろししていたが、「米麦大豆で大もうけは難しい。無駄が多すぎてはこの先が続かない」と江口代表。品種別でブロックを作って集中して作付けする「団地化」にいち早く取り組んできた。

 団地化で隣接する水田が同じ品種となることで、あぜを越えて一気に農薬散布や施肥などの管理作業ができるようになり、作業時間は大幅に短縮された。さらに昨年3月の法人設立を機に、個人財産の農機を今後は更新しないことを申し合わせ、団地化に対応した大型機械の導入を始めた。育苗も共同化して徹底した効率化を図った。

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 効率化の新たな一手が「あぜ倒し」。今年秋の米の収穫が終わると、農地同士の境目のあぜを取り払い、田植えも稲刈りもすべて一工程で行うことができるようにする。法人化によって、あぜの除去などによる田畑の区画拡大に10アール当たり10万円の補助を行う農水省事業を活用することができる。

 だが、境界を取り払うことには課題も多い。所有者はこれまで投資もしながら先祖伝来の地を守ってきたという意識があり、1筆1筆の土地に対する思い入れが強い。法人化に向けた話し合いの中で慎重な意見も出たが、「それでも未来に農地を残すため」と結論を急がず、熟議を重ねた。

 さらに難しいのは、農地ごとに地力や作土の深さが異なるため、水稲の生育にムラが出て倒伏する可能性があること。昨年、センサーで土壌を分析し、施肥量を自動調節する機能を搭載した「スマート田植機」の実証実験の国事業にも手を挙げた。本年度は予算が付かなかったが、ICT(情報通信技術)を活用した最先端技術の導入にも積極的に取り組む。

 26戸のうち専業農家が8戸で、残りすべてが兼業農家。将来的な担い手不足はすでに明らかだが、「将来は4、5人で農地を守ることを理想にしなくてはいけない。今のうちにやれることはやっておかないと」と古賀秀敏理事(66)。強い危機感を背に少数精鋭で時代の荒波に挑む。

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