九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、重大事故時に住民の「命綱」となる避難計画の周知が課題になっている。計画策定が義務付けられている玄海町と唐津、伊万里両市や佐賀県はホームページ(HP)などで公表するが、地区ごとの説明会は予定していない。住民からは、避難場所や経路だけでなく、原発からの距離に応じて段階的に避難する計画を「多くの人は理解していない」と不安視する声が上がる。

 「避難計画を十分に周知する時間が必要だ」。再稼働に反対する住民ネットワークを結成した田口常幸共同代表=唐津市肥前町=は16日、山口祥義知事に対する申入書を手渡した際、県の担当者に詰め寄った。

 避難計画の対象は福岡、長崎両県を含め約26万3000人、佐賀県だけでも3市町で約18万8000人に上る。住民が避難するタイミングは、半径5キロ圏(PAZ)と半径5~30キロ圏(UPZ)で考え方が違う。

 PAZは重大事故時、原則として原発から放射性物質が放出される前に避難する。UPZはまず屋内退避し、放射性物質が放出されれば、モニタリングの実測値に基づき、国の指示を受けて避難を始める。計画は段階的な避難が基本で、住民が一度に避難すれば交通渋滞に拍車がかかることになる。

 ただ、田口さんは「近所で聞いても段階的な避難はほとんど知らないし、行政から直接説明を聞いたこともない。住民の共助が欠かせないはずで、原発事故は全体像が分からなければ大混乱する」と指摘する。住民が互いに考える場の必要性を強調する。

 玄海町は、地区ごとの集合場所や避難場所、避難経路を明記した地図を既に全戸配布し、3月末には改訂版を配る。役場や公民館に掲示、HPに載せている。伊万里市は市報やHPで公表、唐津市もデータ放送やHPに加え、2月には避難所などを記したチラシを配った。県は3月、避難の概要を詳しくした「原子力防災のてびき」(20ページ)約31万部を県内全戸に届ける。

 県や3市町は「住民から求められれば説明に出向く」という受け身の姿勢。唐津市の担当者は「ほとんど問い合わせもない」とする一方、UPZの住民から「事故があればすぐ逃げる」との声を聞いており、「誤った認識の払しょくは必要」と漏らす。

 国は原子力政策に責任を持つと強調しつつ、あくまで政策や財政面で支援する役割とし、住民避難は県や市町に責任があると言及する。避難計画について山口知事は14日の会見で「地域の実情に精通しているのは県や市町なので、しっかり対応しなければならない」と述べた。(取材班)

   ◇   ◇

 玄海原発3、4号機の再稼働に関する県民説明会は21日、唐津市民会館を皮切りに県内5カ所で開かれる。午後6時半~同9時まで。県は入場時に県内に居住地や勤務地があることを示す証明書の提示を求める。

=考・玄海原発再稼働=

このエントリーをはてなブックマークに追加