6月は定例議会の月。唐津市は新市長の肉付け予算や副市長人事、玄海町は9月の町議選を前にした定数削減と、記者たちもあれこれ忙しい。ならばと読者文芸年間賞の取材に向かう。

 俳句部門の横井ただしさん、89歳。山本の団地を迷い迷いたどり着くと、「佐賀新聞俳壇掲載句集」と題した学習ノートを準備して待っていただいていた。

 「醤油」と書いて「ひしほ」。勤務していた宮島醤油の俳句サークルに始まり、句歴60年。俳句談議は人生回顧と重なっていく。

 大学1年の時、終戦を迎え、「日本は至るところ焼け野原。でも学問は捨てなかった」。入社時も再出発途上で、「和多田にあった飛行機工場の廃材を運んで醤油蔵を造りました」。

 初入選は昭和41年。以来入選のたび半紙に墨書し、とじ込んできた。その数675枚。今も読者文芸掲載の金曜日、ドキドキしながら新聞を開くという。

 最近は足が弱り、「表彰式はちょっと難しそうです」と帰りしな、担当者あての丁寧な礼状を預かった。

 醸造技術者として戦後日本の復興と歩み、生活人として日々の哀歓を17文字に詠んで、間もなく卒寿。実直な人生を懐中の礼状に感じながら、帰途に就く。

(唐津支社長・吉木正彦)

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