<亡命も失脚も霾(よな)ぐもりかな>。よなぐもりとは、黄砂による視界不良の空模様を指す。嬉野市出身の俳人で、俳人協会会長の大串章さん(79)=千葉県在住=が20年前に発表した作品である。当時の国際情勢に触発されて、崩壊していく独裁国家を黄砂に包んだ◆黄砂の粒子は、最初のうちは角張った形だが、やがて大気汚染物質にすっぽりと覆われて球形へと変わる。そうなると雲を作りやすくなり、さらに汚染を拡大させてしまう。そのメカニズムを九州大学などの研究チームが先月、中国・北京で解明している◆今年はなぜかまだ、日本では黄砂が観測されていないようだ。気象庁の観測で最も遅い初観測は4月16日だったというから、すでに1週間も遅れている。近年の異常気象の表れだろうか。せっかく黄砂が遠慮がちだというのに、東アジアの空はいよいよ雲行きが怪しく、切迫してきた◆北朝鮮はミサイル連発に続いて、核実験に踏み切る構えで、挑発をやめようとはしない。「戦略的忍耐は終わった」と宣言した米国との間で一触即発の状態だ。米国が差し向けた空母がいよいよ朝鮮半島へと近づく◆冒頭の句ではないが、独裁者の末路は亡命か、それとも失脚か-。半島有事がささやかれ、世界は固唾(かたず)をのんで見つめる。視界不良のよなぐもり。きな臭さばかりが鼻につく。(史)

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