【共同】東京電力福島第1原発事故が起きた2011年から16年10月末までの約5年間に、全国の14港湾施設で輸出しようとしていた中古の自動車と建設重機の一部から国の基準を超える放射性物質が検出され、計約1万3千台が輸出差し止めになっていたことが18日、業界団体の集計で分かった。汚染源は特定されていないが、原発事故前は検出事例がなく、事故後に汚染された車両が各地に流通していた可能性が高い。

 輸出を差し止められた車や重機の大半は、事業者が洗浄後に売却したとみられる。ピークは12年の6544台で、15年は239台と減少傾向だが、原発事故の影響が改めて浮き彫りになり、国や事業者による対策が引き続き求められている。

 輸出向けの中古車や重機の売買はオークションが主流で、国内の取引は線量を測定する規定もないため、荷主が汚染を知らないまま購入するケースが少なくない。業界団体の日本港運協会(東京)の集計には、車や重機を分解して輸出するケースは含まれておらず、汚染された台数はさらに多い可能性もある。

 環境省は「除染して基準値以下まで放射線量を下げれば、再利用や輸出は問題ない」としているが、第1原発周辺の避難区域での国の除染は16年度で終わる予定で、輸出しようとして差し止めになる車や重機は今後増える可能性もある。

 同協会によると、国土交通省のガイドラインに基づき、表面線量が毎時0・3マイクロシーベルト以上なら輸出を差し止めて荷主に返却する。同5マイクロシーベルト以上なら隔離して、国の関係機関へ通報している。

 11年8月~16年10月の間、同0・3マイクロシーベルト以上は約1万3千台。16年は10月末までに146台だった。同5マイクロシーベルト以上はこれまで計90台で、14年8月以降は確認されていない。港湾ごとの台数は川崎港が7892台、横浜港が2746台、名古屋港が978台と続く。

 福島県の業者は「除染で使った車や重機の再利用は、国内では風評被害が心配されるので、需要のある東南アジアなどへ輸出するしかないのが実情だ」と話している。

▼部品輸出ではトラブルも 取引先から賠償請求

 輸出向けの中古の自動車や建設重機は、国内の港湾施設で放射線量を検査しているが、分解してパーツごとにコンテナで輸出する場合は汚染の把握が困難なケースが少なくない。国内で異常が見つからなくても、輸出先の検査で放射性物質が検出され、輸出業者が取引先から損害賠償請求を受けるといったトラブルに巻き込まれた事例もある。

 栃木県の建設業者は、建設重機用の大型発電機30台をスリランカに輸出したが、今年2月、現地の基準値を超える放射線量が検出されたと連絡があり、引き取りを命じられた。発電機はコンテナ2台に入れ、昨年10月に横浜港で検査を受けた際は異常はなかった。引き取ったコンテナは現在、自社の敷地に保管しているが「放射性物質に関する知識もなく、今後どうして良いのか分からない」と頭を抱える。

 輸送料などを含めると約3千万円の損害が生じ、スリランカの業者への返金もできず、裁判を起こされた。業者は「東京電力に賠償を求めたい」とするが、発電機は国内のオークションで仕入れたため使用地域は分からず、汚染原因が東電福島第1原発事故と特定するのは難しいという。

 横浜市港湾局によると、コンテナの検査で異常がなく、輸出先で放射性物質が検出されたケースはこれまで数件あった。いずれも発電機や建設重機で、「コンテナ表面の線量が低くても、中の貨物(発電機など)が汚染されている場合がある」と説明する。

 別の業者は、原発事故から5年以上が経過し、復興や除染の事業が減り始めたため、使用された自動車や重機などを海外に輸出するケースが増えていると説明。「放射性物質の自然減衰で汚染は減っているが、輸出に伴うトラブルは増える可能性がある」と指摘した。

 ■輸出中古車の放射線測定 東京電力福島第1原発事故後、中古の自動車や建設重機の輸出を巡っては海外から汚染を懸念する声が相次ぎ、国土交通省が、風評被害対策として輸出用コンテナの放射線量測定ガイドラインを策定。ガイドラインに沿った検査に合格したコンテナには国交省の証明書が付き、輸出先での取引がスムーズになるが、検査を受けるかどうかは荷主の任意となっている。港湾労働者の被ばく防止のため、中古の車と建設重機は2011年8月から全台数が検査を受けている。

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