福島第1原発事故の自主避難者がふるさとに帰還するかどうかは「本人の責任」と発言、批判を受けて撤回した問題で、衆院東日本大震災復興特別委員会で改めて謝罪した今村雅弘復興相=11日

 九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に同意するかどうか、佐賀県知事の最終判断が目前に迫った。万一事故が発生した場合、国は「責任を持って対処する」と繰り返すが、福島第1原発事故の自主避難者の帰還を巡って「本人の責任、判断だ」と発言して撤回した今村雅弘復興相の言動が後を引き、国への疑念はくすぶる。福島事故への対応は、原発事故に対する国の責任の取り方の先例になるだけに、厳しい視線が注がれている。

 ▽故郷が汚染 

 「今村さんって佐賀出身でしょ? ふるさとが放射能に汚染されてみないと、私たちの痛みは分からないんでしょうか」。福島市から佐賀市に自主避難している渡辺弘幸さん(55)は、ため息交じりにつぶやいた。

 事故直後、原発から約60キロ離れた福島市にも放射性物質が飛来した。国の避難指示は出なかったが、持病が心配で、母親を連れて避難することを決意した。だが、母親は「どうせこの先、長くないから」と残り、1人でふるさとを離れた。

 1年半前、事故で足を骨折して仕事を続けられなくなった。自主避難者に対する住宅の無償提供支援が3月で終了し、家賃が重くのしかかる。「自分の判断で避難したから、自己責任と言われればそうかもしれないが、原発を推進してきた国の責任はどうなる」

 ▽にじむ距離感 

 事故の翌年、2012年6月にできた「原発事故子ども・被災者支援法」は、被災者の生活支援を、原発を推進してきた国の責務として行うと定め、自主避難者も救済対象にしている。衆参両院の全会一致で可決され、今村氏も賛成した。

 避難者の支援活動に取り組み、法案作りに関わった福田健治弁護士は「今村氏は行政トップとして法を誠実に執行する立場なのに、支援法の規定を知らなかったんだろうか」と嘆く。

 政府は「福島への帰還こそが早期復興につながる」として、避難指示の解除を段階的に進め、避難者への生活支援策を縮小していった。支援法も、具体的な施策を決める段階で対象者が限定され、支援の中身が形骸化していった。

 今村発言の半月前の3月17日、避難住民らが起こした集団訴訟で前橋地裁(群馬県)は、原発事故の国の過失責任を認める判決を出した。放射性物質への恐怖や不安にさらされずに暮らす「平穏生活権」が侵害されていると指摘した。国は引き続き争う姿勢で、避難者との距離感がにじむ。

 ▽切り捨て 

 福島原発事故による広域避難の実態を、鳥栖市などで調査してきた立教大学の関礼子教授(社会学)は懸念する。「社会の中で、事故の記憶とともに被災地への関心が薄れていっている。そうした中、政府が示す姿勢は、被害を受けた人たちを切り捨てようとしているようにも映る」

 その上で、今村氏の発言は避難者だけに関わる問題ではないと強調する。「原発の再稼働を進めたい国が『責任を取る』と言った場合の、責任の取り方とはどういうものなのか、今の対応が先行事例になる。原発立地地域の人たちは自分の身に引き寄せて、見ておく必要がある」

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