東芝は2017年3月期決算の有価証券報告書を、法定期限から1カ月以上遅れて提出、上場廃止の危機はひとまず遠のいた。これほど時間がかかったのは、米原発事業に絡む巨額損失の処理を巡って、決算監査を担当するPwCあらた監査法人と意見が食い違い、調整が長引いたためだ。

 PwCあらたは、東芝の言い分を受け入れず、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していない」とした。ただ「全体に与える影響は限定的」と判断、「限定付き適正」の意見を付けた。

 PwCあらたがより厳しく評価し、内容が正しくないことを示す「不適正」を下していれば、上場廃止につながる恐れがあったが、及第点ぎりぎりで最悪の事態を回避したといえる。

 しかし、今回は上場企業に課せられた最低限のルールをかろうじて順守しただけにすぎない。上場を維持して経営再建に向かうには、5529億円に上る債務超過を18年3月までに解消することが不可欠だ。

 このため東芝は好業績を維持している半導体子会社「東芝メモリ」を売却し、その売却益を債務超過の穴埋めとして充てようと、複数のグループと交渉を続けてきたが、訴訟合戦も引き起こし、難航が続いている。

 それぞれの利益や思惑が交錯する売却交渉そのものの困難さに加え、仮に売却で合意できたとしても、その後は、関係各国の独占禁止法の審査がある。18年3月末まで残り8カ月弱。この間に売却契約を終え、独禁法審査を通過することが必要になる。時間的制約などを考えると、極めて厳しい状況と言えるだろう。綱川智社長は「容易ではないが可能」としているが、希望的な見通しにしか聞こえない。

 期限内の売却が見通せなくなることを踏まえた次善の策も、そろそろ重要になってきたのではないか。あらゆる事態を想定して準備をするのはビジネスの基本だ。いちるの望みにしがみついているうちに、すべての道が閉ざされてしまえば、元も子もない。

 そんなに選択肢はないとみられるが、理論的には「東芝メモリ」の新規株式公開(IPO)や、東芝自身による株式新規発行を通じた資本増強などが検討対象になるのだろうか。相当な準備期間が必要なことや、東芝という企業に対する市場評価の急低下を考えれば、いずれも困難なオペレーションになることは間違いない。

 指摘するまでもなく東芝は水面下で、さまざまなシミュレーションをしているはずだ。本筋の売却交渉に全力を挙げることはもちろんだが、いざというときに備え次善の策に磨きをかけることも急務だろう。

 東芝がここまで追い込まれた直接の原因は06年に買収した米原発子会社の破綻だ。世界の原発事業は11年の東京電力福島第1原発事故で、一部の新興国を除き大きく縮小したが、東芝はこの流れにあらがうかのようなビジネス展開を続けた。

 原発輸出を国策とした政府の後押しもあったのだろうが、巨費を投じたプロジェクトの成果にこだわったのは経営判断のミスだった。厳しい判断を下すべきトップは不正会計に手を染めていた。かつては日本を代表する名門企業として名声を博した東芝は一敗地にまみれた。再生できるのか。(共同通信・高山一郎)

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