教育勅語や般若心経を書いた湯飲み。叙勲受章者や亡くなった元同僚に贈っている

左官道具の鏝(こて)を工夫して手作りした台を使い、絵付けをする鬼塚恒久さん

 佐賀市川副町の自宅作業場で、素焼きの湯飲みに般若心経を1文字ずつ、刻むように書いていく鬼塚恒久さん。6時間かけて仕上げる湯飲みには、緻密な文字が整然と並ぶ。

 航空自衛隊の戦闘機パイロットを務め、石川県の小松基地司令などを歴任した鬼塚さんが、筆に親しんだのは26年前。業務日誌を筆で書き始めたのがきっかけだ。日誌は退職までの15年間で26冊を数えた。色紙や扇子に般若心経を書き、当時の部下や退職者、基地周辺の人々に贈ってきた。

 退職後、妻啓子さんの郷里・川副町に移り住んだのと同時に、湯飲みに般若心経を書きたいという気持ちが芽生えた。市販の白磁の湯飲みに上絵付けで般若心経を書き、七輪陶芸で焼いてみるも割れる確率が高すぎて断念。試行錯誤を重ね、現在は素焼きの器に下絵付けして釉薬をかけ有田の窯元で焼いてもらう。

 「書道の経験はないが、筆が手になじんでペンより書きやすい」という鬼塚さん。般若心経に学んだ「こだわりのない心」で、今日も筆を握る。

(地域リポーター・富崎喜代美=佐賀市)

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