四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働し、国内の稼働原発は2原発3基になった。原子力規制委員会は審査を加速させており、今後再稼働が進む情勢だが、一方で電力会社の責任範囲が焦点となっている原発事故時の賠償制度の見直し議論は迷走気味だ。資金の備えも脆弱(ぜいじゃく)で、対応は後手に回っており、東京電力福島第1原発事故の教訓を生かせていない。

 福島事故の賠償総額は7兆円を超える見通しで、支払いが続いている。事故直後、政府は「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を設立し、一時的に国が賠償を肩代わりする仕組みを作った。

 政府は9兆円の交付国債枠を設け機構に資金を援助。事故を起こした東電と、原発を持つ他電力が協力して弁済する。各社の負担額は原発の出力などから算出。2015年度の返済額は2330億円で、内訳は東電1267億円、関西電力315億円、九州電力169億円などとなった。

 現行制度は、事故を起こした電力会社が上限なしで賠償責任を負う「無限責任」を定めている。これに対し電力業界は、経営上負担が大きすぎるとして国との分担による「有限責任」への切り替えを求めている。

 国の原子力委員会の専門部会で見直しを議論しているが、見解はさまざまでまとまっておらず、当面は機構の枠組みを活用せざるを得ない。

 機構は、各社の拠出金をプールして将来の事故に備えるとしているものの、福島事故の返済が終わらない限り積み立てる資金はできない。最大1200億円の保険金以外、新たな事故への備えが十分にないまま再稼働が進んでいる形だ。

 立命館大の大島堅一教授(環境経済学)は「事故が起きれば賠償以外にも除染などさまざまな費用が必要で、規模の小さな電力会社は持たない。資金の裏付けが不十分なまま再稼働を進めるのは態度としていいかげんだ」と批判している。

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