時とともに表情を変える夕景の美しさに見とれてしまう。島根県の宍道湖(しんじこ)はシジミの名産地であり「水の都・松江」の象徴だ。ここが、かつて水質汚染や環境破壊の危機に立った◆島根県と鳥取県にまたがる湖、中海の干拓と淡水化事業によってである。中海は川で宍道湖とつながっている。事業は海水と淡水が混じり合う両湖を水門で締め切って淡水化し、中海の4分の1を干拓して農地にするというもの。「昭和の国引き」といわれた大事業だったが、大きな反対運動が起こり、中止になった◆30年近く前、諫早湾干拓を考える参考にと宍道湖を取材で訪ねたことがある。中海干拓は既に凍結状態になっていた。その後、中海は止まり、諌早はなぜ進んでしまったのかとの疑問がずっと消えてない◆諌早干拓の開門をめぐる訴訟で、長崎地裁が出した和解案を受け入れるか協議がヤマ場を迎えている。開門しない代わりに、国は漁場環境を改善する基金の創設を示した。賛成したのは長崎県だけで、漁業者は「実効性がない」と反発し、手詰まり状態だ◆島根では、宍道湖を淡水化すると「富栄養化でアオコ(植物プランクトン)が大発生して景観が台なしになる」と市民が立ち上がり、署名運動を頑張っていた。当事者の漁業者だけの運動には限界がある。やっぱり最後は草の根の世論だ。(章)

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