佐賀県の山口祥義知事が九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の再稼働に同意した24日、判断の行方を注視してきた県民からは「原発なしでも生活できているのに、なぜ」「今の避難計画で大丈夫なのか」と疑問や不安の声が上がった。「やむを得ない」という知事の考えに、原発と深い関わりがある地域を中心に理解を示す意見もあり、思いは賛否の間で揺れた。

 知事の会見が終わった夕刻、武雄市図書館にいた松尾潤一郎さん(64)は「知事は熟慮を重ねたと言ったが、あれだけ多かった反対意見はどう考慮したのか」と首をかしげた。別の男性(40)も「原発抜きで生活できている中で、動かす理由がはっきりしていない。廃炉や使用済み核燃料のことも不透明なままでいいのか」と疑問を呈した。

 県民の安全が何よりも大切-。知事はこう繰り返したが、鳥栖市のNPO法人理事の久保田陽子さん(60)は不安が拭えない。「電気の恩恵を受けているから反対と言いづらいけど、チェルノブイリや福島の事故を見れば、現在の技術で制御しきれないのは明らか。電気代の上昇よりも事故による汚染の方が怖い」

 玄海原発から約6キロの離島に58人が暮らす向島(むくしま)(唐津市肥前町)。樋口洋二区長(62)は「原発を新設するなら反対だが、再稼働は仕方がない」と受け止めつつ、避難計画の実効性は疑問視している。「定期船で逃げることになっているけれど、みんな自分の船を使うことしか考えてない」

 福島第1原発事故を受けた全炉停止から5年半。経済を原発に頼る玄海町で、息子が関連会社で働く農業松本正弘さん(65)は「原発は町を支える産業の一つ。否定することはない。安全に運転してくれればそれでいい」と淡々と述べた。

 知事の判断に理解を示す意見は別の地域にもある。佐賀市の岩本秀子さん(70)は「安全が一番大事。でも、年金受給者としては電気代値上げのことも考えると仕方ないのかな」。藤津郡太良町の自営業杉本陽さん(45)は「いろいろなことをてんびんに掛け、国民や市民、町民のことを考えた上での最終判断。知事にとっても難しい判断だったと思う」と受け止める。

 「福島第1原発事故のことが頭から離れない」「あのような事故を起こしてはならない」-。知事は会見中、視察した福島への思いを強調した。6年前、福島県から家族で佐賀市に避難した30代女性は語る。「動かさなくて済むのなら動かさない方がいい。でも、安定した次世代エネルギーもなく、電力確保のために仕方ない部分もある。首長が決めたことには従うしかない。安全であることを願うばかりです」

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