作品の審査をする(左から)夏樹静子さん、森村誠一さん、北方謙三さん=昨年2月、佐賀市の楊柳亭

 「九州さが大衆文学賞」は、24回目の今回で幕を閉じる。現在、選考作業が進み、3次にわたる審査を経て、大賞候補作品が6編に絞られた。3月の最終選考会で大賞が決まる。プロ作家の登竜門としてスタートして以来、歴代の大賞受賞者には第一線の作家として活躍している人も少なくない。改めて、これまでの歩みを振り返ってみたい。

 本文学賞は、佐賀を拠点に執筆活動をしていた作家笹沢左保さん(1930~2002年)が、「佐賀から文化発信を」と提唱したことで始まった。選考委員に笹沢さんのほか、夏樹静子さん、森村誠一さんという当代の人気作家3氏を迎えた地方文学賞として注目を集めた。

 以来、多くの作家を輩出してきた。過去の受賞者をみると、サントリーミステリー大賞と同読者賞を受賞した海月ルイさん(「シガレットロマンス」で第5回大賞)、城山三郎経済小説大賞を受賞した指方恭一郎さん(「首」で第11回大賞)、昨年直木賞候補になった梶よう子さん(「い草の花」で第12回大賞)らがいる。

 地方発信の文学賞として評価が定着していたが、笹沢さんが2002年に死去し、昨年3月には夏樹さんが急逝。創設当初からの2人の審査員が亡くなったこともあり、これまで同文学賞が目的として掲げた「新人発掘」という役割を一定果たしたと判断、惜しむ声も多くあったが、今回で区切りをつけることになった。

 最後となる24回目の審査は、第9回から選考委員を務めている唐津市生まれの北方謙三さんをはじめ、北方さんとの縁で同じ直木賞選考委員である林真理子さんが1回限りの「特別選考委員」としてメンバーに加わることで、開催が可能になった。

 同様の文学賞は地方の新聞社主催などいくつかあるが、選考委員にこれほどのビッグネームがそろうことは異例で、毎回300編前後という多くの作品が寄せられている。今回も「推理小説」「時代・歴史小説」の2部門に、国内43都道府県と海外から合わせて324編の作品が寄せられた。これは第1回の475編、第11回の326編に次いで過去3番目の多さ。都道府県別では、佐賀県が最も多く45編、次いで東京都と福岡県の各34編、大阪府20編、神奈川県18編と続いた。海外は中国から2編あり、文字通り、全国級の文学賞として定着していることがうかがえる。

 笹沢さんが地方からの文化発信を唱えて四半世紀。本文学賞が中央文壇にも刺激を与えてきたことは何ものにも代えがたい。今回、審査を通過した6編の作品の最終選考会は東京都内で実施、結果は3月中旬に佐賀新聞紙面で発表する。(丸田康循)

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