【共同】山本有二農相は25日の記者会見で、国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門差し止めを命じた17日の長崎地裁判決について、国として控訴しないと表明した。「開門しない方針を明確にし、基金による和解を目指すことが問題解決の最良の方策だ」と述べた。

 開門の可否に関しては、別の訴訟で福岡高裁が2010年に開門を命じた判決が確定している。国は「開門命令」と「開門禁止」の相反する司法判断が示される中、最高裁に統一的判断を求めるとしてきた従来の方針を転換する。

 一方、訴訟の補助参加人だった漁業者側は長崎地裁に正式な当事者として参加する申し立てをしており、控訴期限の5月1日までに当事者として控訴手続きを取る方針。

 国はこれまで開門命令の確定判決に従わず、法的制裁金が科されている。この制裁金の支払いを強制しないよう国が求めた訴訟が福岡高裁で続いており、今回の差し止め判決を確定させて「開門できない事情」として高裁に証拠提出する狙いも国側にあるとみられる。

 長崎地裁判決は「農地に塩害などが生じ、営農者の生活基盤に重大な被害が出る」として、開門差し止めを命じた。漁業者側弁護団は、堤防閉め切りが有明海の漁業被害を招いたと主張していたが、判決は「開門しても諫早湾や有明海の漁場環境が改善する可能性は低い」と指摘した。

 訴訟では、長崎地裁が昨年1月、開門しない前提で和解勧告した。国は漁業振興のため100億円の基金案を提示したが、漁業者側の理解が得られず、今年3月に和解協議は決裂した。諫早開門に関する裁判はこのほか、6件が争われている。

【国営諫早湾干拓事業】

 農林水産省が、有明海の諫早湾で実施した農地確保と低地の高潮対策を目的とした事業。全長約7キロの潮受け堤防で湾を閉め切り、約670ヘクタールの農地と、農業用水を供給する調整池約2600ヘクタールを整備した。1986年に着手し97年に堤防を閉め切った。漁業環境が悪化し、漁業者側は閉め切りが原因だとして開門を求めて提訴。佐賀地裁、福岡高裁が開門を命じる判決を言い渡し、国は上告せずに2010年に確定した。営農者側は開門差し止めを求める裁判で対抗。長崎地裁は13年と15年の仮処分決定に続き、今月17日の判決で開門しないよう命じた。

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