日本銀行が景気刺激のためにマイナス金利を導入してから半年がたった。不動産融資が増えるなど一定の効果があったものの、国債の利回りも下がり、銀行や保険会社などの経営に影響が出ている。日銀の金融政策がアベノミクスの好スタートを演出してきたが、「円高株安」局面に変わり、手詰まり感もささやかれている。

 18日の東京外国為替市場の円相場は2カ月ぶりに100円を突破し、1ドル=99円台後半をつけた。年明け以降、「円高株安」の流れは止まらない。日銀が円の供給量を増やし、円安を誘導して輸出企業に優位な状況をつくり、株高で景気回復を目指すのがアベノミクスの方程式なら、2月のマイナス金利導入後も円高が続く状況は日銀として不本意だろう。

 マイナス金利とは何か。一般的な当座預金であれば利息はつかないが、日銀は民間の金融機関から預かる場合、0・1%の金利をつけていた。日銀は当座預金の一部について、逆に手数料を取ることで、銀行にお金を眠らせるのではなく、企業などへの貸し出しを増やせとメッセージを出した。それがこの政策の狙いだ。

 金融機関の融資金利も一緒に下がったため、不動産投資は増加している。身近なところでは住宅ローンの金利が下がり、借り換えをした人も少なくないだろう。

 しかし、1990年代にバブル景気が崩壊してからは低金利政策が続いており、企業からすれば目新しいことではない。人口減少とともに国内マーケットが縮小し、企業の設備投資意欲は高いとは言えない。銀行が貸出先を探すのは容易ではない時代だ。

 副作用も出ている。国債や社債など債券の利回りも下がり、運用する銀行や保険会社の収益が悪化している。このため、かんぽ生命は養老年金の保険料を値上げし、三菱東京UFJ銀行は損失を出す恐れのある国債の入札の特別参加資格を国に返上した。

 大手が厳しいということは、老後の資産運用で困惑している高齢者はかなりいるだろう。不安は消費の低迷も招く。

 マイナス金利の景気への効果が見られないため、日銀は7月、上場投資信託を2倍の6兆円に買い増しする追加緩和策を打ち出した。ただ、「株価対策にすぎない」と冷めた声も出ている。

 異次元の金融緩和で株高を味わった市場はさらなる刺激を求めている。最近では「ヘリコプターマネー」を期待する声すら上がる。その語感通りにお金をばらまく金融政策だ。紙幣を発行する中央銀行(日本の場合は日銀)が政府の無利子国債を購入し、資金を供給するもので、政府は“打ち手の小づち”を手にすることになる。

 もちろん、財政規律を失いかねないこの政策には政府も日銀も否定的だ。ただ、現実味をもって語られるほど、手詰まり感が強いことを認める必要があるだろう。

 異次元の金融緩和が始まり3年5カ月だが、目標とする経済成長率に届かない。マイナス金利を含め、アベノミクスを支える政策は効果が一時的なカンフル剤が多いこともあるだろう。奇手を繰り返すばかりでは足腰の強い成長は実現できない。「力強く前へ」の掛け声ばかりでなく、これまで進めた政策を検証する時期に来ているのではないだろうか。(日高勉)

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