■全国の参考事例紹介 藤井特任教授

生徒が政策提案、採用も

 全国各地で取り組まれている主権者教育の参考事例を紹介したい。

 ある県では、教員の研究会と弁護士会、選管の3者で教材作成を試みている。選管だけでなく、弁護士が入ることで、中立性や発言の範囲といった「地雷原を踏まない」二重三重のセーフティーになる。

 別の県では、各校が独自に作成した教材を持ち寄り、交換会を行っている。1回の会議に参加すると、県内全ての教材が手に入る。交換会の後は、グループで教材の研究協議をする。これはすぐに応用が利く。ぜひいろいろな学校と教材を交換してみてはどうか。

 若者が投票に行かない理由の一つである「1票で政治が変わるのか」について、手法によっては子どもに実感を持たせることができる。ある県では県議と高校生は定期的に意見交換会をしている。

 ある過疎の町では「子ども議会」をうまく活用し、中学生が町の執行部の前で、町を良くするための提案をプレゼンテーションする。

 10万人規模の大きな市では、小中学校から「市への提案」を募り、上位10グループが市長以下執行部の前でプレゼンをする。いずれも、実現可能な提案は採用される。早ければその年度内に実現されるため、子どもの「政治は変わる」という気持ちが高まる。

 各地の取り組みを見ると、学校現場より選管や議会事務局、行政側からの提案が面白く感じた。政治的中立性でどこまで発言できるかといった足かせがあるが、教員側からもいろいろな形でチャレンジをしてほしい。

■主権者教育どう進める 春田弁護士

議員活動の監視も重要

 主権者教育の「すそ野」に着目してほしい。リアルな政治的問題だけでなく、身近にある課題を見つけ、考えていくことが主権者教育のすそ野を支えることにつながる。すそ野を広く捉えれば、公民科かそうでないかなど関係なくなるはずだ。

 主権者教育を広い概念で捉えると、選挙教育や政治教育だけにとどまらないため、公民科だけでなく他の教科でも幅広く進めるべきだ。主権者教育で育みたい力は、世の中の問題を自分のこととして捉え、自分も周りも関わり、社会をより良くしていく力。

 例えば野良猫への餌やり問題や、子どもの声がうるさくて保育園が造られない問題などは、片方だけが正しいわけではなく、対立構造がある。こういった身近にある解決困難な問題について、絶対的な正解が出なくとも、折り合いをつけながら、より両者が納得できる解決に近づけていく活動も主権者教育ではないか。世の中の問題に気づき、考えて、判断して、表現する力を身につける場が必要で、それが主権者教育になる。

 法教育の実践例を紹介すると、小学校では学校で困っていることを扱った。提示した解決案の善しあしを児童に分析させ、新たな解決案を考えさせた。中学から高校では、AKB48を事例に恋愛禁止は人権侵害に当たるかや、ペット税の導入や救急車の有料化についてなど、現場の先生と連携を図り、タイムリーな課題を取り上げた。

 主権者教育は、選挙後が大事だと思う。選挙の結果が出た後、当選者がきちんと議員活動をしていくのか、監視し続けなければならない。それが主権者として議員を選ぶことの意味で、ここまで高校生に伝えるべきだと思う。

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