米領グアム周辺への弾道ミサイル発射という具体的な計画で北朝鮮が挑発を強める一方、米国と北朝鮮の間で衝突回避に向けた対話の糸口を探る兆しもうかがえる。

 トランプ米政権発足後初めて米ワシントンで開かれた日米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、北朝鮮の核・ミサイル開発計画の放棄に向けて日米同盟を強化し、圧力をさらに強める方針で一致した。

 ただ圧力強化だけで北朝鮮の動きを押さえ込めるのか。米朝間の対話の動きを見極め、地域の安全保障環境の改善に向けて中国やロシアも巻き込む取り組みが必要だろう。米国との緊密な情報共有も不可欠だ。

 2プラス2が発表した共同文書は、朝鮮半島の非核化に向けて国連安全保障理事会の新たな制裁決議の完全な履行を各国に求めるとともに、特に中国に対しては「断固とした措置」を取るよう促した。

 河野太郎外相は共同会見で「対話のための対話には意味がない」と強調。小野寺五典防衛相は2プラス2で、ミサイル防衛体制の強化策として、海上自衛隊のイージス艦に搭載している迎撃型ミサイルを地上配備する「イージス・アショア」を導入する方針を示した。

 同盟強化に関しても、日本側は安全保障法制整備を踏まえた自衛隊の役割拡大を表明。米側は核戦力による、いわゆる「核の傘」の提供を含めた日本防衛への関与を確認した。共同文書は、沖縄の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を「唯一の解決策」として、建設計画の着実な実施も明記した。

 外交よりも軍事的対応が前面に出た共同文書と言える。ミサイル防衛体制は着実に整備すべきだ。だがイージス・アショアの導入には数年かかり巨額の費用も必要となる。危機を理由にした装備増強が逆に緊張を招く面も否定できない。

 自衛隊と米軍の一体化がさらに進む懸念も強まる。日米同盟一辺倒でいいのか。北東アジア地域の緊張緩和への粘り強い取り組みが求められる。

 北朝鮮が公表したグアム周辺へのミサイル発射計画について、共同文書は、脅威が「新たな段階に入った」として「最も強い表現で非難」すると表明した。

 ただ北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は14日に「愚かな米国の行動をもう少し見守る」と述べ、発射計画を当面、留保することを示唆。これに対してトランプ大統領は16日に、ツイッターで「金委員長は非常に賢明でよく考えた決断を下した」と評価した。

 両トップの発言は緊張緩和に向けた打開策を模索する動きとも受け取れる。だが今回の2プラス2の共同文書や、21日から予定される米韓合同指揮所演習に対して、北朝鮮が反発を強める可能性も否めない。

 日本側が最も危惧するのは、米朝の挑発合戦が軍事行動にまで発展してしまうことだ。金委員長の出方は予測困難だが、トランプ大統領の言動にも不安が拭えない。

 一方で、米朝が日本の頭越しの対話によって北朝鮮の核保有を認める事態も懸念される。地域の不安要因を固定化することになるからだ。

 こうした事態を招かないよう、日本側から米政府に対し、自制的な行動と情報提供を求め続けるべきだ。(共同通信・川上高志)

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