鳥栖から大峠へ向かう道沿いに鎮座する大山祇神社=鳥栖市河内町

 鳥栖市北西部に位置する河内町から、権現山の南を通り福岡県市ノ瀬へ至る道に大峠があります。現在は山間を県道329号線が通っていますが、かつては人とモノが行き交う道でした。戦国時代には、一帯を治めていた筑紫氏の拠点・勝尾城(かつのおじょう)(鳥栖市牛原町・山浦町・河内町)と一ノ岳城(福岡県那珂川町)を結ぶ重要な道筋で、1569(永禄12)年には豊後国の戦国大名・大友氏の軍勢数万がこの一帯を通ったことが『豊前覚書』などに記録されています。

 那珂川町では大峠のことを塩買峠とも呼んでいました。その名称は鳥栖市をはじめとする佐賀県側の人々が、大峠を越えて塩を購入しに福岡県側へと行き来していたことに由来します。大峠近くの小山は、塩を一升盛った形をしているので一升盛と呼ばれるなど、塩にちなんだ地名が今も残ります。

 一方、昭和30~40年代までは山葵( わさび )売りの女性たちが那珂川町から大峠を越えて鳥栖へ行商に来ていました。大山祇(おおやまづみ)神社で休憩した後、鳥栖の町並みを売り歩く山葵売りの姿は春の風物詩の一つでした。やがて交通や物流の変化により大峠を行き交う人は減りましたが、九州自然歩道のポイントとして登山者が訪れるなど、新たな歴史を重ねています。(地域リポーター・田中健一=鳥栖市)

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