国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防。排水門で仕切られた諫早湾(左)と調整池(右)=4月18日、長崎県諫早市

 山本有二農相は25日、国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門差し止めを命じた長崎地裁判決について「開門しない方針を明確にして臨む」と述べ、控訴しないことを表明した。国は2010年に上告ぜずに開門を命じた福岡高裁の判決を自ら確定させたが、その義務を履行しない異例の政策転換となる。今後、別の訴訟で開門に代わる100億円の基金案での和解を探る。開門を求めてきた漁業者らは厳しい状況に立たされる。

 国は控訴権を放棄するとともに、利害関係者として補助参加していた開門派の漁業者側の控訴を取り下げる手続きをした。ただ、開門派は国の主張に左右されない第三の当事者として訴訟に参加する申し立てをして、25日に控訴した。参加が認められれば国が控訴しなくても、漁業者側の控訴が認められ、判決は確定しない。農林水産省幹部は「確定の有無に関係なく、開門しない方針は変わらない」とした。

 開門派の馬奈木昭雄弁護団長は「控訴せず、真摯(しんし)に前向きに積極的に解決を目指さない国の態度は到底許されない。和解による解決以外はあり得ないのは当然で、そのために国は開門しないことに限定しないで協議するべき」と批判した。

 国は福岡高裁の確定判決で「開門」、13年の長崎地裁の仮処分決定で「開門禁止」の相反する法的義務を負った。「どちらか一方の立場に立たず、最高裁の統一的判断を得る」との方針を示してきたが、山本農相は「解決には国として基本的な考え方を明確にする必要がある」と強調した。

 農水省は判断要因として3点を挙げた。一つは、干拓営農者らの反対で開門の事前対策工事の着手すらできないこと。二つ目は、開門の確定判決以降、これを否定する開門しない司法判断が重ねられていること。三つ目は、司法制度の下では必ずしも最高裁による統一的判断が得られるとは限らないこと-。これらを総合的に考慮した。

 一方、国は確定判決に基づき、開門するまで漁業者側に制裁金を支払い続けており、7億9290万円に上っている。制裁金などの強制執行をしないよう国が求めた請求異議訴訟が福岡高裁に係属しており、国はここで開門派との和解協議を設定したい考えで、裁判の進行を見て基金案を提案するとしている。

 ただ、仮に和解が成立せず、国が敗訴すれば、制裁金を支払い続けなければならない状況に陥る。農水省幹部は「そうしたリスクがゼロとは言わない」と認める。

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