かつて自ら受け入れたはずの開門の法的義務に国が従わない。「開門しない」方針を明確にした25日の国の決断は、約束を信じて待ち続けてきた漁業者にとって残酷な選択となった。

 出口の見えないこの争いに終止符を打つため、国は後戻りできない大きな賭けに出た。今回の決断のポイントは長崎地裁の和解協議で一度は決裂した開門に代わる100億円の基金案による和解を改めて目指すとした点だ。農水省にはあと一歩で実現できるとの手応えがあり、これを最良の策として疑わない。

 開門と開門禁止のどちらの立場にも立てないという従来の方針を捨て、基金案に沿う判決ならば敗訴すら受け入れてみせることで国は退路を断った。ある農水省職員は「今後、開門の議論に応じるつもりはない。片方の道を閉ざし、一点突破を図る。国は大きく舵(かじ)を切った」と語る。

 控訴断念を急いだのは、佐賀を除く漁業団体が賛成に転じた基金案の熱が冷めないうちに、国の姿勢を示す狙いもあったとみられる。

 開門の道を閉ざし、聞く耳をふさいで解決に臨む。こうした漁業者をないがしろにするような決断が、どういう結末を導くのか。無策のツケを補うには、あまりにも大きな賭けだ。

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