諫早湾干拓事業の潮受け堤防開門関連の裁判は現在7件が乱立している。開門派と開門阻止派の対立や確定判決を受けて開門義務を負った後も態度を曖昧にしてきた国側の姿勢によって膠着(こうちゃく)状態に陥っている。

 有明海沿岸の漁業者らの訴えに応じて開門を命じた2010年12月の福岡高裁判決が国の上告断念によって確定した後、長崎県の干拓地の営農者らが対抗手段として開門差し止めを求める裁判を起こした。長崎地裁は13年11月に差し止めを認める仮処分を決定した。相反する司法判断を突き付けられた国は間接強制による制裁金も科され、開門してもしなくても支払いが発生する状況になった。

 開門の是非を巡り、長崎地裁は仮処分決定後も15年11月に国側の異議を却下して差し止めを維持し、今月17日の本訴訟の判決でも開門した場合について「営農者に重大な被害の恐れがある」「漁業環境が改善する可能性は低い」などと仮処分での判断を踏襲した。山本有二農相が25日示した「確定判決後、開門しない方向で裁判所の判断が重ねられてきた」との見解はこの経過を指している。

 一連の裁判で16年1月、初めて開門派、開門阻止派、国の3者による和解協議の場が長崎地裁の訴訟で設けられた。ただ「開門しない前提」の条件付きで、国は漁業環境改善に充てる100億円の基金案を提案したが、漁業者側や佐賀県側は拒否した。和解協議は今年3月に打ち切られたものの、山本農相は裁判で立ち消えになった「開門によらない基金」を改めて提示する形となった。

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