小学校新設をめぐる不透明な国有地払い下げ問題が波紋を広げている。10億円近くの価値がある土地を、国はごみ撤去などを理由に値引きし、格安で学校法人に売却した。野党は学校法人理事長の国会招致を求めているが、名誉校長には首相夫人の名前があり、安倍晋三首相自身も追及の矢面に立っている。

 問題の土地は大阪府豊中市の国有地8770平方メートル。国が依頼した不動産鑑定では、土地の評価額は9億5600万円だった。

 学校法人「森友学園」は当初、土地購入資金を用意できず、国と異例とも言える10年間の定期借地契約を結んだ。学園側は浅い土中に廃材などのごみがあると指摘し、土を入れ替える対価として、国から1億3100万円を受け取っている。

 学園側が深い土中からごみが見つかったと再び訴えたため、国は土地評価額からごみ撤去費名目として8億円あまりを値引きし、国が支払った土壌対策費とほぼ同額の1億3400万円で売却した。

 学園側は評価額の14%にあたる格安価格で土地を入手した。一方、国はこの国有地売却で300万円余りしか手にしていない。国の資産処分は財政への寄与が大原則であると考えれば、とても納得がいくものではない。

 当然、公平性も欠く。学校建設地の隣には、ほぼ同規模(9492平方メートル)の市営公園があるが、市が2010年に14億2300万円で購入した国有地だった。学校建設地は国有地にもかかわらず、市議が開示請求を出すまで、売却額を非開示としてきた。

 そもそも、ごみ撤去費は正しく見積もられたものなのか。財務省近畿財務局と土地を保有する国土交通省大阪航空局が売却に関わっているが、8億円もの撤去費用がかかったごみが敷地内のどこに、どれほどの量があったのか具体的な説明ができないでいる。

 一方で、学園の理事長は開き直ったように堂々と、「(撤去費は)数千万円ではきかないが、8億円は下回る」と話す。理事長の言葉が正しければ、官僚たちの値引きの根拠が崩れる。そうであるなら、なぜ国への背信行為とも言えるような安売りをしたのかが次は問われる。

 4月に開校予定の小学校名は「瑞穂の国記念小學院」だが、当初は「安倍晋三記念小学校」という名で寄付金集めが行われた。昭恵夫人が名誉校長を務めていることを考えれば、夫妻で「広告塔」を担ってきたといえる。また、理事長は首相を支える保守系団体「日本会議」のメンバーだ。

 安倍首相は国会答弁で「私や妻、事務所が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と国有地問題への関与を強く否定する。しかし、関係者の顔ぶれをみれば、官僚たちが首相と学園との近い関係を意識した可能性は否定できないだろう。

 担当者たちにしても、リスクを冒して加担しても何の得にもならない話だ。誰の判断で決まったのか、徹底的に解明すべきだ。

 国有地は言うまでもなく国民の財産である。こんなずさんな売却は今回が特別なのか、あるいは、国民が知らないだけで頻繁に起きているのか。行政の公正さを示すためにも、国民が納得する調査を進めてほしい。(日高勉)

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