あるうどん屋さんの物語。早田光希さん(38)は20代の頃、陶芸家として身を立てようと修業に励んでいた。妻と幼い子どもを抱えながら、アルバイトで家計を支える日々◆30歳のとき転機が訪れる。「うどん店を開くから手伝ってくれないか」と知人からの誘い。このまま陶芸の夢を追うか、それとも安定した暮らしを選ぶか-。悩んだ末、陶芸の夢はあきらめて、うどん作りに打ち込む道を選んだ◆そのまま、夢は夢で終わっていたかもしれない。ところが、3年後に持ち込まれた独立話をきっかけに、陶芸の夢が息を吹き返す。多久市の多久聖廟の隣にある空き店舗を下見に行くと「自分のうどんを喜んでくれるお客さん、その横に並ぶ自作の陶器…」。イメージがわいてきた◆現在は手作りの陶器でうどんを出し、うどん作りや陶芸体験もできる店として売り出し中だ。観光客向けの体験メニューとして、観光パンフレットに取り上げられるようにもなった。「陶芸、うどんを通じて多久市を発展させたい。それが私の夢です」◆先日、佐賀市であった「若い経営者の主張」地区大会で発表を聞いた。早田さんは入賞はかなわなかったが、商工会の仲間に支えられて奮闘する姿が伝わってきた。どれほど回り道に見えても、人生には無駄なことなんかない。話を聞きながら、そう確信した。(史)

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