『論語』は、思想家・哲学者の孔子と、優秀で個性的な門弟たちとの対話の記録である。東洋最高の古典といわれ、今日の私たちも学ぶことが多い◆そこに記された<過(あやま)ちを観(み)て、斯(ここ)に仁(じん)を知(し)る>。どういう過ちをしたかによって、その人の心もちが分かると解釈される。人柄のほどがうかがえたのが、復興大臣を辞任した今村雅弘氏である◆先の「自己責任」発言に続き、東日本大震災の被害について「まだ東北で良かった」と述べた。多くの人が亡くなり、住まいを失い、今なお苦しんでいる人のことを思えば、口にできるはずのない言葉だった◆論語はこうも説いている。<駟(し)も舌(した)に及(およ)ばず>。「駟」は4頭立ての馬車のこと。いったん口に出してしまったことは、速い馬車で追いかけても取り返しがつかない、失言は慎むようにとの教えである。一票の負託を受けた政治家の言葉は重い。ましてや先頭に立つ大臣だ。謝罪、撤回をしても「たたいて、さすれば元通り」とはいかないのである。傷つけられた心は取り戻せない◆孔子は約2500年前の中国で、役人になって失脚したり流浪したりと、さまざまな苦難を経験した。その孔子が政治の要諦を聞かれて<信無(しんな)くんば立(た)たず>と答えている。政治は民衆の信頼がなければ成り立たないというのである。礎としてこそ政治家だろう。(章)

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