「いじめ防止プログラム」を開発した佐賀大学の松下一世教授(右)と川副中の池之上義宏校長

 いじめに対する子どもの問題意識を育む教材「いじめ防止プログラム」を、佐賀大学教育学部の松下一世教授(61)と佐賀県内の中学教諭が開発した。小中学生への意識調査を基に学校で実際に起こりやすい場面を設定し、いじめる側やいじめられる側の心理を具体的に学び、討議させる。小中学校で教科化される道徳で副教材として取り入れるように呼び掛けている。

 小学校高学年と中学生向けのデジタル教材で、五つのテーマを教員が組み合わせて授業をする。読み取りに時間がかかっていた読み物の道徳教材と異なり、電子黒板やパソコンに事例を表示して、話し合いに時間をかけられるようにした。

 いじめの定義を考える教材では、プロレスごっこや修学旅行の部屋決めなどの事例から、いじめに当たるか見極めさせる。「力関係の存在」「意図的集合的」「継続性」といういじめの特質を理解させ、「いじめかもしれない」という見方を養うことを目指す。

 「いじめられる人の気持ちをとことん考えてみよう」と題した教材では、いじめられる子が笑ったり平気な様子で振る舞ったりしがちな理由を考えさせる。「弱い自分を見せたくない」という自尊心が本心を抑えさせ、周囲もいじめに気付きにくくなると指摘し、解決方法を論議する。

 県生徒指導連盟が2013年、小学6年と中学3年の1万7千人を対象に実施した「いじめ意識調査」を契機に開発を進めてきた。

 調査では、誰にも相談しなかった被害者が5割に達した。連盟会長だった池之上義宏川副中校長(58)は「大人社会を反映してか、子どもの世界でも個別化が進んでいる」と指摘する。松下教授は「傍観者の意識を変えることがいじめ対策では重要になってくる。教材を手掛かりに成功体験を積み上げ、無力感が漂いがちな状況を変えるきっかけにしてほしい」と話す。

 教材には人権教育の観点も盛り込んだ。教師向けの解説書では「嫌いと言って何が悪い」と訴える子どもに対し、「友達を選ぶ自由」があるのと同時に、攻撃や排除が相手の権利を奪う許されない行為であると指導するよう求めている。

 プログラムは書店で販売している解説書に記載しているURLからダウンロードできる。解説書は明治図書刊、定価2060円(税別)。

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