佐賀大学と県立有田窯業大学校が統合した「佐賀大学有田キャンパス」が本年度開設され、西松浦郡有田町の現地で先月、開設記念式典があった。有田焼創業400年の節目を昨年迎えた有田にとって、新キャンパス誕生は窯業界の大きな期待を集める。次代を担う人材育成はもちろん、学生と地元がどう連携し、産地再生への取り組みにつなげるのか。「地域に開かれた大学」としての役割が求められている。

 有田キャンパスは、統合した窯業大学校の敷地や設備を活用して4月に講義を開始した。佐賀大芸術地域デザイン学部「芸術表現コース有田セラミック分野」の実習研究拠点で、専攻する学生と大学院生、留学生の計18人が学ぶ。釉(ゆう)薬や土の成分分析機、多様な種類の窯などの設備があり、焼き物に関する、より専門的な知識や技術が習得できる環境が整っている。

 この新キャンパスの最大の意義は、地域に開かれた大学としての機能だろう。学部のカリキュラムには「地域創生フィールドワーク」など地域との連携を意識した科目が組まれ、地域の地理や文化・芸術資源を生かした企画を展開し、その活動を情報発信する手法も学ぶ。キャンパス内には、日本遺産に認定された肥前窯業圏の発展を学術的な側面から支援しようと「肥前セラミック研究センター」も設けられている。

 こうした施設を通じた連携例として提案したいのが、若者に人気のある「波佐見焼」の方向性に先鞭(せんべん)をつけたデザイナー森正洋さん(1927~2005年)の仕事の研究だ。森さんは、「G型しょうゆさし」で当時の「ミゼット」「電気炊飯器」とともに第1回グッドデザイン賞(1960年)を受賞するなど、日常で使う食器の「道具としての美しさ」を追求、その後も100点以上のグッドデザイン作品を送り出した。

 有田キャンパスに距離的にも近い嬉野市には、森さんのデザインを管理する「森正洋デザイン研究所」があり、森さんの作品をはじめ、約3万点あるというスケッチ、ノート、写真など膨大な資料を整理、アーカイブスの構築に取り組んでいる。セラミック分野のカリキュラムでは、原材料の知識習得やろくろ成形などの実技以外に、マーケティングなど経営的な視点まで及ぶ。その意味でも、デザインを通して流通の問題を常に考えていた森さんの仕事は、興味深い研究テーマになりそうだ。

 森さんは仕事が終わった後も、窯元のデザイナーや有志と定期的なミーティングを欠かさなかったという。その熱意が現在の波佐見焼にもつながっている。新キャンパスでも、生徒と地域が一体となって多面的な研究活動を進め、次代を見据えた変革につなげていくことを期待する。(丸田康循)

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