辞表を提出した後、記者に囲まれる今村雅弘氏=26日午前、首相官邸

 東日本大震災の被害を「まだ東北で良かった」と発言し復興相を辞任した今村雅弘氏は、本来寄り添うべき被災地を「あっちの方」と言い放ち、現場から遠い中央目線の本心をさらけ出した。復興に携わる市民や有識者は「東北への差別意識が透けて見える」と厳しく批判している。

 「最近の復興相の発言は、何兆円かかったとか何割が完成したとか、成果を挙げるばかりで被災地に寄り添えていない」。津波で岩手県大槌町の自宅が流されたNPO法人「遠野まごころネット」理事長臼沢良一さん(68)は指摘する。

 事務方が組んだ短い日程で被災地をなぞるのではなく、じっくり現場を歩けば、数字に表れない大事な人を失った悲しみや、必死に前を向いて暮らす姿が目に入ってくるはず。しかし、最近は被災地でほとんど国会議員を見掛けないという。

 被災者は長引く仮設住宅暮らしも辛抱強く耐えている。臼沢さんは「東北ほど不満や要望を口にしない地域はない。それに甘えているから、失言が出てくる」と話した。

 民俗学者で東北大災害科学国際研究所の川島秀一教授(64)は「あまりに当事者意識に欠ける。東北への根強い差別意識から出た言葉だ」とみる。「中央の人が普段考えていることが思わず口に出たのだろう。現場を知らず、机の上では復興はできない」と強調する。

 東京電力福島第1原発事故の被災者を研究している、いわき明星大の高木竜輔准教授(40)=地域社会学=は「今村氏の資質というより、復興の進み具合を巡って政府と被災者の間で認識のずれが生じた結果だ」と話す。政府は2020年東京五輪に向け、過度に復興をアピールしているように見えるとし「今村氏の認識の甘さにつながっているのではないか」と分析した。

 「平成の『白河以北一山百文』発言だ」と表現したのは、被災者らの声を集めた本を多数出版している仙台市の出版社代表土方正志さん(54)。この言葉は、明治維新後「白河の関(福島県)より北は一山が百文にしかならない」と東北軽視の意味で使われた。土方さんは「150年たっても、まだ同じようなことを言われ続けるのか」とがくぜんとしたという。

 今村氏以前にも、歴代復興相らに失言や不祥事が相次いだ。「根底にあるのは東京目線、東北蔑視の考え。後任の復興相だけでなく政治家全員がいま一度、東北への向き合い方を見つめ直してほしい」と訴えている。【共同】

このエントリーをはてなブックマークに追加