原子炉補助建屋内の中央制御室を視察し、説明を受ける山口知事(中央)。右端は瓜生道明九州電力社長=19日午後、東松浦郡玄海町の玄海原発(代表撮影)

 「皆さん、どうですか。九電は変わりました、よね」。19日、九州電力玄海原発の敷地内にある原子力訓練センターで瓜生道明社長と向き合った佐賀県の山口祥義知事は、会場にいた九電社員たちに呼び掛けた。「はい」。社員たちは口をそろえた。

 玄海原発3、4号機の再稼働に関する地元同意手続きの最終盤。山口知事は安全対策の視察中にもいろんな社員に声を掛けながら、意識改革の浸透度を確かめた。再稼働に限らず、玄海1号機の廃炉作業でも何十年と関わり続ける九電と佐賀県。いかに緊張関係を保ち、「安全神話」の復活を防ぐかに神経をとがらせる。

 知事の尺度は至ってシンプルだ。うそをつかない-。「本当に子どもみたいな言葉」をあえて使う。「ガバナンス(企業統治)という言葉で言っても、多分、いろんな人たちはピンとこない」と指摘し、分かりやすい言葉でコミュニケーションを取る意義を強調する。

◆苦い経験

 安全対策はハード面だけでなく「ソフトウェアが大切」と繰り返し、重大事故は「ヒューマンエラーが一番大きな課題」。その背景には自身の苦い経験がある。

 知事になる前の総務省時代、1999年に発生した茨城県東海村のJCO事故、2003年の北海道十勝沖地震では石油タンクの被害対応に直接携わった。いずれも、うそが現場を困難にした。「アリの一穴から事故は起こる」。経験からしみついた教訓という。

 福島第1原発事故後、11年夏に玄海2、3号機の再稼働同意目前に発覚した九電の「やらせメール」問題。プルサーマル導入時から続く佐賀県と九電のなれ合い関係を露呈、組織風土が厳しく糾弾された。

◆三つの約束

 先の会談で瓜生社長は、地に落ちた信頼の回復へ、外部委員会の設置や社長の考えを伝える社内番組、経営層と社員との対話と、体質改善に取り組んできたことを改めて強調した。

 「うそをつかない」「組織の風通しを良くする」「あらゆる事象に対応できる体制を構築する」。山口知事は15年1月に就任直後、九電に三つの約束を求めた。それでも、再稼働の動きが進む過程では、使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設の検討や緊急時対策棟の構造変更で事前に十分な連絡がなく、知事はそのたびに眉をひそめた。

 台風など災害時やトラブルで停電があればいち早く復旧を目指す電力会社の「DNA」。瓜生社長は原子力の安全追求も「DNAにする」と誓った。

 「常に本当にうそをつかずに情報を出し合い、信頼を勝ち得ていくこと」。原発再稼働に根強い反対や不信の声が渦巻く中で、知事が九電に発した思いは、県に対する県民の視線でもある。

=玄海原発 再稼働へ=

このエントリーをはてなブックマークに追加