佐賀農業の最大の課題の一つは担い手育成だ。肝心の新規就農者の数が最近、減り続けている。佐賀県内の2017年(16年6月から1年間)の新規就農者数は前年比21人減の103人となり、この10年で最少となった。景気回復と、雇用情勢の好転で、他産業に人材が流出しているのが最大の要因である。

 就農の形態を見ると、農家出身者で農業以外の仕事を経てのUターンの割合が最も高く、親が年をとって後を継ぐ例が多い。専業農家でも子どもに一度は別の仕事をさせて、視野を広げた上で就農させる狙いだろう。

 新規就農者の営農の形としては、施設のアスパラガス、イチゴが多く、露地野菜では米麦にキャベツやタマネギを組み合わせた複合経営が目立っている。

 農業後継者を増やすことは、佐賀県の農政にとっても常に上位にくるテーマだったが、今年は従来にない動きがあった。県外や他分野からの人材確保のため、県の研修拠点「トレーニングファーム」が近く稼働する。

 農業に意欲を持つ人に、栽培技術の習得から、実際の就農までを切れ目なく支援するのが目的で、武雄市と佐賀市富士町に整備。前者では施設のキュウリ栽培、後者ではホウレンソウ栽培を学ぶ。

 武雄市では既に、愛知県の夫婦らがキュウリ農家のところで研修を始めている。日本トップクラスの技術を持つ集団、JAさがみどり地区の施設胡瓜(きゅうり)部会がマンツーマンで指導に当たる。研修期間は2年だが、県は「就農して5年でプロ農家にしたい」と意気込む。

 これまでの農政は後継者の数の確保に目が行きがちで、「育てる」という視点が乏しかった。農業をやればもうかる、という実績をつくれば、その背中を見て、若者が就農する―。そんな好循環をつくるのが理想だろう。

 佐賀農業は、かつて「新佐賀段階米づくり運動」で全国的に有名になった。伝統的に集団での営農に強みがあり、後継者育成も行政やJA、生産部会、地域が一体になって取り組む態勢が欠かせない。それぞれが当事者意識を持ちながら、「みんなで育てる」という視点を持ちたい。

 白石町は県外から町内に移住する希望者のための研修制度「しろいし農業塾」を独自に設けている。人口減で、佐賀県内のどの自治体も外からの定住に力を入れているが、こうした形で農業を活用することも考えてほしい。

 佐賀県の農業産出額は1984年がピークで1865億円。2015年は1303億円と減り続けている。以前は佐賀より少なかった長崎県に抜かれ、直近では250億円の差をつけられた。園芸と畜産主体に伸びているからだが、農業県といわれる佐賀にとっては厳しい現実だ。

 このままでは佐賀農業の未来は描きづらい。いくら生産振興に旗を振っても肝心の人、特に就農する若者がいないとどうにもならない。

 新規就農者の減少は、行政やJAなどが、農業の持つ本当の魅力を発信できていないということもあるだろう。今、農業はカッコイイ、感動がある、稼げるという「新3K」の職業とみられている。今後は若者へのアピール方法もしっかり考えたい。(横尾章)

このエントリーをはてなブックマークに追加