九州電力玄海原発3、4号機の再稼働をめぐり、地元の東松浦郡玄海町議会が同意することを決めた。これを受けて町も近く同意する方針で、地元同意の行方は佐賀県の山口祥義知事の判断に事実上委ねられた。

 東日本大震災で東京電力福島第1原発が深刻な事故を起こしたのを受けて、玄海原発も2011年12月に4号機が停止して5年以上が過ぎた。

 九州電力を招いた玄海町議会の特別委員会では、使用済み核燃料をどう保管するのか、将来的な見通しへの質問が相次いだ。原発内のプールにさらに詰め込むにしても限りがあり、安全性が高いとされる「乾式貯蔵施設」に移そうにも時間がかかる。再稼働を認めれば近い将来、行き詰まるのは明らかで、その不安が表れた格好だ。

 折しも、佐賀県が県内各地で県民向けの説明会を開いているが、気になるのは会場へと足を運ぶ県民の少なさである。

 すでに九州では、鹿児島県の川内原発が全国に先駆けて再稼働している。県民の多くは、玄海原発にしても再稼働は既定路線なのだと静観しているのかもしれない。

 だが、原発再稼働に対する世論は真っ二つに割れたままだ。佐賀新聞社が加盟する日本世論調査会が昨年11月に実施した調査では、賛成が35%、反対が58%で、全国的には反対意見が主流を占める。一方、先日の唐津市長選で佐賀新聞社が独自に行った調査では、賛成、反対はいずれも4割超で拮抗(きっこう)している。

 この国のエネルギーの将来像をどう描くのか。いくつもの課題や矛盾が残されている。

 例えば、原発再稼働の理由に「安価な電力」が挙げられていたが、本当だろうか。東日本大震災で原子炉が次々にメルトダウンを起こし、いまだに事故の収束は見えない。ひとたび事故を起こせば、天文学的なコストが生じる。これでも「安い」と言えるのだろうか。

 温室効果ガスの排出を抑えるという理由にしても、その解決策が原発回帰しかないとは考えにくい。

 県民説明会では、核燃サイクル計画を堅持する方針や、使用済み核燃料の最終処分場の計画なども説明されている。巨額をつぎ込んだ高速増殖原型炉もんじゅは廃炉が決まり、核燃サイクルの将来は見通せない。使用済み核燃料の処分にしても、安定した地層に埋めると言うが、いったいどこに埋めるつもりだろうか。

 「世界で最も厳しい新規制基準に合格した」と、資源エネルギー庁や九州電力は“お墨付き”を得たかのように説明する。だが、そのお墨付きを与えたはずの原子力規制委員会の話を聞けば、田中俊一委員長が「絶対的安全を保証するものではない」と、自らの責任は限定的なのだと繰り返している。

 「安全神話に逃げ込まない」という意味で、あたかも誠実な対応のようにも見えるが、その実、これは誰も責任を取らない構図なのではないかと思えてならない。

 玄海原発から5キロ圏内には8100人、30キロ圏内には福岡、長崎県も含めて25万4700人が暮らす。再稼働に同意するかしないか。知事の判断に向けて、県民的な議論を深めたい。(古賀史生)

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