「就農当初は米麦中心だったが、徐々に単価の良い葉物野菜にシフトしてきた」と語る木室哲郎さん=杵島郡白石町

黒毛和牛の畜産農家では数少ない株式会社化を実現させた森永公一さん。「ちゃんと休日が取れるようにしたい」と力を込める=小城市芦刈町

■最優秀・九州農政局長賞 木室哲郎さん(35)米麦・野菜生産、白石町

ICT使い圃場管理徹底

 米麦、タマネギ、キャベツ、白菜、菜の花を生産している杵島郡白石町の木室哲郎さん。家族のほかパート従業員を常時数人雇い、約20ヘクタールを管理している。効率化につながるICT(情報通信技術)や最新の作業機械を積極的に導入し、土作りや適期作業にこだわる。昨年べと病がまん延して打撃を受けたタマネギも、10アール当たり4トンと平年並みの収量を確保した。

 全ての圃場(ほじょう)の現状を常に把握し、効率的に作業できるように、圃場の管理状況や作業日誌を一覧できるソフトを採用。トラクターには、薬剤や肥料をまいた場所が表示されるナビを導入した。「指示役とオペレーターの2人体制だった作業が、1人でできるようになった」と利点を語る。

 昨年産タマネギについては、あちこちから秘けつを尋ねられたが、「原因はよく分からない」と明かす。ただ、常に心がけたのは排水対策と適期防除。深耕ともみ殻の投入を含む弾丸暗きょを土作りの基本とし、防除に関しては「雪の前と雨の後に、それぞれ丸1日以上を費やしながら徹底した」と振り返る。

 工業高校を卒業し、農業は父親仕込み。就農して5年だが、乗用タマネギ定植機を県内で初めて導入するなど、すでに一目置かれる存在だ。「毎年1年生という気持ち。気候も毎年違うし、学ぶこともいっぱい」と白い歯を見せつつ、「オペレーターがもう1人いればさらに効率化できるし、圃場も増やせる」と、さらなる規模拡大へ意欲を燃やす。

■優秀・NHK佐賀放送局長賞 森永公一さん(36)繁殖・肥育農家、小城市

会社化、新しい畜産目指す

 黒毛和牛の畜産農家では数少ない株式会社化を昨年夏に実現させた。父親と共に代表取締役を務める森永公一さん=小城市芦刈町=は「従業員を雇い組織化することで、畜産農家の新しい姿を外部の人に認識させたい」と意気込む。

 父親の利己さん(68)は1990年ごろまで酪農を営んでいた。乳価下落を機に和牛の繁殖から肥育までを手掛ける「一貫型」に転じた。森永さんは東京の農業系大学を卒業しながらも「働き詰めで家族旅行もできない家業は継ぎたくない」と食品会社に就職。ただ、土日も出勤する営業職の忙しさに「家業と大差ない」と、25歳で畜産の世界に飛び込んだ。

 当時、一貫型はまだ少なく、繁殖と肥育の飼育法は“水と油”ほど違って細心の注意が要求された。リーマンショックの2008年以降、牛肉消費の浮き沈みは激しく、経営の安定化が13年から家業を任された森永さんの課題となった。

 為替相場でコストの振れ幅が大きい輸入飼料から、牛専用の飼料稲に切り替え、安定的なコスト削減に成功。子牛の死病事故を少なくするため、牛舎に温度調整ができるミスト(細霧)機能を備えたり、ほ乳ロボットを導入するなど作業の効率化に腐心した。

 現在は繁殖牛60頭、肥育牛250頭と就農時から倍増。株式会社化によって福利厚生を充実させ、ワークライフバランスを考えた経営を目指す。「ちゃんと休日が取れ、家族旅行ができるようにしたい」と力を込める。

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