厳しい残暑。一日の仕事を終え、キンキンに冷えたビールを喉に流し込む瞬間は格別である。差しつ差されつ飲むのも楽しいが、「まだ残っているうちに注(つ)ぎ足してしまう。これは愚の骨頂で、一番ビールをまずくする飲みかたなんだよ」と作家の池波正太郎が『男の作法』(新潮文庫)に書いている◆コップについでおくとビールの成分が飛んでしまう上、ぬるくもなりがちなのだという。本当にうまい飲み方は、ビール瓶を手元に置いておいて、コップに3分の1くらいずつ、手酌で飲み干していくのだとか。食通で知られた池波ならではのこだわりだが、足してしまってはまずいものがあるのは確かだ◆この夏の参院選で導入された「合区」も、そのひとつ。1票の格差を縮めようと、小さな選挙区同士「鳥取・島根」「徳島・高知」を単純に足してしまった。結果は散々。選挙区が広すぎて関心が薄れ、投票率はがた落ち、無効票まで増えてしまった◆どこを合区するかの過程では、佐賀県も福岡や長崎と合区させる案が浮上していたし、人ごとではない。自民党は合区解消へ見直しに入るようだが、単純な足し算で地方の声をないがしろにされてはたまらない◆ビールの原料にもなる二条大麦の作付面積は佐賀県が全国1位。うまいビールが飲めるのも、地方が元気であればこそだろう。(史)

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