「何度も作る中で偶然できた形に発見もある。そこに喜びを感じる」とろくろの妙味を話す梶原茂正さん=西松浦郡有田町の茂正工房

自らの作陶と同時に、青磁の源流をたどる研究、次世代の人材育成に取り組む梶原茂正さん=西松浦郡有田町の茂正工房

■青磁探求 人づくりに情熱

 「技術を突き詰めようとすれば、優秀な刑事のようでなければならない」-。科学理論や経験に裏打ちされた読みと直感から発想を得て、徐々に絞り込んでいきながら試行錯誤して1つの結論にたどり着く、一連の仕事をこう表現する。土と釉薬と炎、そして人の手が一体となって生み出した青磁の色彩や表情の探求に終わりはない。

 自身で作陶を手がけるとともに、九州産業大学(福岡市)の芸術学部教授として、中国・宋代の古窯における製造技術の再現や、町内の泉山磁石場から採掘されたロウハ(硫酸鉄)から青磁を作る技術の研究に取り組む。自然科学と歴史の両面からのアプローチで美しいものの本質を突き止めようとする。

 染付で知られる老舗窯元「しん窯」の次男として生まれ、土をロボットにかたどって焼いておもちゃにするなど、幼少期は窯場が遊び場だった。だが、跡を継ぐ気はなく、大学進学を機にふるさとを出た。卒業後に「何となく」で実家で働くことになり、3カ月もすると、自ら作りたいという意欲が頭をもたげてきた。

 1971年に佐賀県窯業試験場で釉薬の研究から始め、胎土や呉須、ろくろと学ぶ。特にろくろ技術は、後に人間国宝となる井上萬二氏にも指導を仰ぎ、その技を会得しようと躍起になった。

 ライフワークである青磁との出合いもその頃。鍋島家ゆかりの家に伝わる青磁の水差しを目にして以来、神秘を帯びた青、多彩な表情を見せる造形の妙、独特の質感をはぐくんだ二千年を超える歴史に思いをはせるようになった。「知識なくして創造もなし」。その一念から次第に焼き物づくりの源流をたどる研究に没頭する。

 実家でろくろ師としてブランドの立ち上げに携わった後の83年に独立し、「茂正工房」を開窯した。自宅の登り窯は平成の始まりとともに築かれ、今も現役だ。ガス窯と違って制御は難しいが、「作意が透ければいやらしくなる。完璧もいいけれど、登り窯には味わいがある」。不確かさ、曖昧さも作品の幅を広げる。

 次世代を担う人づくりにも人生の集大成として取り組む。教授として着任して19年目。かつての教え子たちも教壇に立つ。「はやりのサイクルは短いが、普遍的な美しさを生み出す職人は一晩で生まれない」。登り窯が織りなす、味わい深いものづくりに通底するものがある。(村上大祐)

 【かじわら・しげまさ】 1948年、有田町生まれ。千葉工業大卒業後、「しん窯」に入社。83年に独立して茂正工房を開窯。94年に伝統工芸士(ろくろ)認定。九州産業大芸術学部教授。工房は同町黒牟田丙2797。電話0955(42)3444。

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