工房内には1畳分の緞通を数点展示。肌ざわりの良さを生かした工房オリジナルのクッションカバーを持つ浦川裕代さん=小城市小城町の日々楽

白壁とフローリングの空間で、高さ1・5㍍、幅2㍍もある織機を使い少しずつ緞通を仕上げる浦川裕代さん

 江戸時代からの伝統手工芸品「鍋島緞通(だんつう)」の工房が、小城鍋島家ゆかりの小城公園(小城市小城町)近くにオープンした。工房を開いた織師の浦川裕代(ひろよ)さんは「肌ざわりを生かし、デザインを工夫して若い世代に日常生活で愛用される品物を作り出したい」と話し、伝統と歴史ある“小京都”小城から鍋島緞通の新しい「カタチ」を発信する。

 工房は「日々楽(ひびら)」と命名。「緞通特有の肌ざわりの良さを日々の暮らしの中で楽しんでほしい」との思いを込めた。今年3月、実家敷地内に白壁瓦葺(かわらぶ)きでレトロ風の平屋を新築した。

 歯科衛生士だった浦川さんは約20年前、佐賀市であった鍋島緞通の展示会を訪れ、優雅な模様と緻密な手工芸を目にし、それが佐賀の伝統工芸品と知り衝撃を受けた。ほどなく鍋島緞通の機元に入社。織師や営業など緞通をめぐるあらゆる仕事に関わった。

 6年ほど前に退社し、蓄えたお金で緞通専用の織機を購入。アルバイトで生活費を稼ぎながら年2回の展示会に出す製品を自宅で細々と織り続けた。展示会で顧客から「現代の生活空間に合ったデザインが欲しい」との声を聞き、より商品価値のある緞通を目指し工房を持つことを決意した。

 伝統的な「蟹牡丹(かにぼたん)」「唐草」文様を織る一方で、平安時代の公家の衣装の文様「花立涌(はなたてわく)」をアレンジしたり、フローリングの寝室のベッドサイドの敷物を意識したデザイン性ある緞通を次々と制作している。

 1畳分(95センチ×191センチ)を織るのに約2カ月かかるため「基本的にオーダーメードは受け付けない」と浦川さん。本家本元から離れた工房ならではの魅力を出そうと敷物以外の商品も開発し、クッションカバーなどを編み出した。

 現代の生活空間にとけ込むデザイン性以上に、肌ざわりがいい緞通本来の機能性に浦川さんは着目。「この工房から生み出す緞通は、日常生活のストレスフリーで愛用される価値あるものにしたい」と意気込む。

 11月には、市内の羊羹(ようかん)店舗「八頭司伝吉」本店併設ギャラリーで、座布団など小物を集めた展示販売会を開く。不定休のため工房来訪時は要連絡。問い合わせは電話090(9074)3485。

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