乾燥させたノリの色つやなどを確認する川崎賢朗さん=3日、佐賀市

◆漁協負担減へ共同生産支援も 

 コンビニおにぎり用の需要や節分での「恵方巻き」ブームからノリの国内消費が堅調な中、漁業者らが高齢化や働き手の減少に悩んでいる。ノリ生産には乾燥機など初期投資がかさむほか、多くの人手が必要な作業も多い。こうした負担を減らすことで若手の確保につなげようと各地の漁協が共同生産を促すなど安定操業に腐心している。

 「今がノリ生産で大事な時期。まとまった睡眠はしばらく取れない」。養殖ノリの収穫が最盛期を迎えた2月上旬の深夜、佐賀市の漁師川崎賢朗さん(56)は完成品を蛍光灯にかざし、充血した目で色つやを確認していた。収穫したノリを薄く加工するため機械を微調整しながら昼夜を問わず作業し、多い日で10万枚以上を生産。破れなどがないかも1枚ずつ調べ、出荷している。

▽毎年30人が廃業

 最大産地の九州・有明海に面する佐賀県は、直近まで13年連続で生産量全国1位が続く。県有明海漁協は今期の目標に昨期とほぼ同量の約19億枚、生産額228億円を掲げる。ただ県内のノリ漁業者は5年ほど前に1000人を割り、現在800人余り。毎年約30人が廃業する中、少なくなった担い手で全国トップを維持しているのが現状だ。

 有明海では近年不作が目立ち、原因に諫早干拓などによる漁場悪化を指摘する声もある。今期は県内ほぼ全域でノリの色素量が減る「色落ち」が発生している。藤津郡太良町の男性漁師(47)は、「ほとんど値が付かない」として一部は収穫を見送った。不作による価格高騰から今期の生産額は目標に届きそうだが、生産量は下回る見通しだ。

▽安価な輸入品増

 全国漁業協同組合連合会によると、温暖化の影響とみられる不作や漁業者の高齢化を受け、ノリの国内生産量は減少傾向が続く。担当者は「値上がりはやむを得ないが、消費者に受け入れられるのか」と気をもむ。韓国や中国の安価な輸入品が増える中、「これ以上の価格高騰を抑えるには生産量維持が重要な課題」(関係者)という。

 ノリは培養から加工までを漁業者が担うため、脱水機や乾燥機など機械一式をそろえるのに4千万~6千万円の設備投資が必要とされる。網の張り替えなど多人数での作業も多く、漁業者の一人は「船を持つだけでは漁ができない。人手と資金が必要だ」と指摘する。

▽跡継ぎ確保困難

 佐賀の漁協は一斉に種付けや収穫をして品質のばらつきを防ぐほか、病害リスク低減にも取り組む。担当者は「ノリ漁を長く続けられる環境整備が必要」とし、漁業者の負担軽減のため、約2億円を投じ共同で使える加工工場も33カ所に増設したほか、数世帯をまとめて船の燃料代を減らすといった知恵を絞る。

 東日本大震災に見舞われた東北地方の産地・宮城県では加工工場の8割以上が被災。宮城県漁協によると、現在の働き手は震災前の約6割の130人に減り、平均年齢は60歳代に達する。県漁協では加工工場を整備するなど支援に注力する。関係者は「それでも後継ぎ確保は困難な問題だ」と対応に苦慮している。

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