欠陥エアバッグのリコール(無料の回収・修理)問題で経営難に陥っているタカタが、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約1兆7千億円の見通しで、製造業としては戦後最大。問題が長期化して被害が拡大し、経営破綻に至った原因は、経営陣の危機意識の薄さ、対応の拙劣さにある。企業統治の根本的な改革が必要だ。

 タカタは中国企業傘下の米自動車部品会社キー・セイフティー・システムズ(KSS)に1750億円でほぼ全ての事業を譲渡し、裁判所の管理下で再建を進める。タカタのエアバッグを使用している自動車メーカー各社は、リコール費用全額を立て替えており、今後も製品供給を続けてもらうため、費用請求の大部分を放棄して経営再建に協力する。

 欠陥エアバッグの事故により米国だけで少なくとも11人の死者が出たことで、世界的な自動車部品メーカーとしてのブランドは大きく傷ついており、再生への道は平たんではない。しかも、タカタはまだ再建計画の明確な青写真を示していない。消費者と取引企業の信頼を回復するために、一日も早く詳細な再建計画を示すべきである。

 当面、消費者に対して最優先すべき課題は、現在も市場に大量に出回っている欠陥エアバッグの早期回収と再発防止の徹底だ。タカタは欠陥エアバッグの無償回収を続ける方針であり、自動車メーカーと協力して取り組み、消費者の不安を解消してほしい。

 タカタに部品を供給している下請け企業など取引先も、売掛金などの回収が滞れば、経営に打撃を受ける恐れがある。自動車業界のサプライチェーン(調達・供給網)は各企業が緊密に結び付いており、1社でも離脱すると全体に大きな影響が出る。経済産業省には十分な目配りを求めたい。

 ホンダが2008年に最初のリコールを届け出てから約9年。事態が長引いた原因は、できて当然の危機対応をタカタができなかったことにある。危機を危機と認識できなかった上に、法令順守の意識が低く、消費者重視の視点が弱く、説明責任を果たす姿勢が一貫して乏しかった。企業統治が十分に機能していなかったといえよう。

 もしタカタが当初のトラブルを軽視せず、早急に詳細な調査を実施してエアバッグの欠陥の原因を究明し、欠陥製品の回収や新製品の開発に取り組むとともに、消費者と自動車メーカーに丁寧な説明をしていれば、死傷者がここまで増えることはなかったのではないかという見方が多い。

 タカタの社風を示す象徴的な例は、高田重久会長兼社長が重要な局面でも自ら説明することが極めて少なかったことだ。1月に検査データの不正で元幹部3人が起訴された際も、高田氏は記者会見を開かず、自動車メーカーからは「もっとトップが表に出て説明すべきだ」と不信の声が出ていた。まずトップから率先して意識改革を始めなければならない。

 タカタが真に復活するためには、企業風土の変革と従業員の意識の刷新が不可欠である。それができなければ、将来、製品の欠陥や不祥事が発生したときに、同様の対応が繰り返されるかもしれない。すでに三菱自動車が類似の不正を重ねた実例がある。タカタの破綻を日本の企業全体に対する教訓としたい。(共同通信・柳沼勇弥)

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