その地に立ち、初めて分かることがある。昨秋、取材で訪れたキューバ。カナダから首都ハバナ行きの機内は日本人の姿が目立った。隣の席は36歳の男性バックパッカー。自動車関連会社の技術職をリストラされ、再起のきっかけ探しの旅だという◆「米国と国交が回復して国が変わるかなと思って。その前に見ておきたい」。最新技術の車を相手にする同じ職でいいのか。米国の経済制裁の影響から古い車ばかり走るキューバで、もう一度考えたい。そんな理由だった◆時が止まったかのようなレトロな街並みに、ラテンのリズム…。平等主義をうたう小さな社会主義国にひかれる人は多い。そのキューバに暗雲が垂れ込めた。トランプ米大統領は、対融和政策から渡航制限など経済制裁の再強化へ舵(かじ)を切り直したのである◆オバマ前大統領が2年前に回復した国交は、また揺れることに。やっと増えつつあった旅行者の足が遠のくとも考えられ、観光業にも打撃だ。トランプ氏は自らの支持層へのアピールに躍起らしい◆ただ、現地に流れていた空気は根強い反米感情。関係が良くなると手放しに信じる人ばかりではなかった。今また将来が読めなくなっても、しなやかにかわし生き抜いていくことだろう。先進国が置いてきてしまった大切な何かが、あの国には脈々と流れているのだから。(章)

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