トランプ米大統領が就任から100日を迎えた。選挙中に掲げた「100日計画」など公約の多くは、議会や司法に阻まれたり、外国政府の反発を受けたりして、穏健な方向への軌道修正を余儀なくされている。今後はこうした穏健化の方向をもっと強めてほしい。

 米国が最優先で取り組むべき格差や行き過ぎたグローバル化の是正、国際的な平和と安定の回復などは、トランプ氏の対決をあおるやり方では実現できない。大統領として業績を上げるには、分断を修復し国内外でリーダーシップを発揮する以外に手はないのだ。

 外交面では北朝鮮政策が重要課題だ。軍事圧力を強める一方で、中国の習近平国家主席と協議して経済制裁の強化を促すなど、積極的な姿勢が目立つ。

 米国のしっかりとした関与は歓迎するが、シリア攻撃の時のような国際協議の軽視、軍事力偏重という「力による平和」路線では根本的な安定化は難しい。北朝鮮問題は軍事衝突の危機をはらみながら長期化しそうだ。周辺国との連携を密にし、外交手段を尽くして解決を目指すべきだ。

 就任以来、大きく変わったのは外交だ。公約通り、環太平洋連携協定(TPP)離脱こそ宣言したが、シリアへのミサイル攻撃など、看板の「米国第一主義」から外れる軍事作戦も遂行した。

 為替操作国に指定し高関税をかけ、「一つの中国」政策を見直すと言った対中国政策は、がらりと方針を変えた。「時代遅れ」と批判した北大西洋条約機構(NATO)も、その意義を認めた。

 イラン核合意も「最悪」とけなしていたが破棄はせず、在イスラエル米大使館をエルサレムに移転するとの方針も、アラブ諸国の反発で後退させた。一方でプーチン大統領を称賛した対ロ関係は、ロシアによる米大統領選介入疑惑やシリア問題の対立で、首脳会談の予定も立たない。

 これらの変化は、マティス国防長官ら実務派を重用しだしたため、とみられ、評価できる変化と言える。だが、首尾一貫しない対外政策は、トランプ氏をどこまで信頼できるのかという、疑問を外国政府に抱かせる。

 外交や安全保障政策は大統領の独断で遂行できるが、内政課題は議会や野党民主党との調整が必要で実現していない。

 医療保険制度改革(オバマケア)撤廃の失敗、イスラム圏からの入国禁止措置の後退のほか、インフラ整備計画は遅れ、対メキシコ国境の「壁」建設も予算がつかずに不透明だ。連邦法人税の35%から15%への引き下げや所得税減税などの案を発表したが、歳入減による財政悪化をどう防ぐのか、議会との激しい攻防は必至だ。

 人事の遅れも手痛い。各省で政策を実際に立案し運営する副長官、次官、次官補クラスがまだ就任していない。一方で過激思想の持ち主であるバノン首席戦略官の影響力をそいだことで、支持者からは「裏切り者」との批判も浴びだした。

 公約である移民送還や雇用創出の遅れは、大統領選での支持基盤である白人労働者層の反発を招く。今でも支持率が低いのだから、支持基盤に嫌われたら、政権はさらに失速する。トランプ氏は追い詰められて、再び過激な外国敵視に転じる懸念もある。日本は冷静に粘り強く国際主義をとるように働き掛けたい。(杉田弘毅)

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