北朝鮮が再び「火星12」とみられる中距離弾道ミサイルを発射、日本上空を通過させた。国連安全保障理事会は北朝鮮が強行した6回目の核実験に対し制裁強化を採択したばかりだ。国際社会の一致した警告を愚弄(ぐろう)する暴挙だ。

 北朝鮮は核実験やミサイル発射について、米国の「敵対的政策」に対抗するための「自衛的な抑止力を蓄えるためだ」としているが、こうした主張を受け入れている国は一つもない。緊張を醸成するだけの詭弁(きべん)に過ぎない。孤立を深めている現実を直視すべきだ。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を巡る現在の危機は、日本や韓国の一部で防衛力強化の議論を引き起こしている。北東アジア地域で軍備拡張競争のような悪循環に陥ることを回避する視点から、北朝鮮の挑発的な行動を阻止するアプローチも考えるべき時を迎えている。

 特に韓国では、1991年に撤去された在韓米軍の核兵器を再配備すべきとの主張が保守系の大手新聞の社説でも公然と語られ始めた。「軍事力が不均衡な状態での南北対話はあり得ない」との論理だ。

 韓国への核兵器再配備は、朝鮮半島の非核化を逆行させてしまう。日本はもとより容認できないが、中国やロシアも当然強烈に反発するだろう。冷戦時代の対立構造が再現しかねない。

 そして、この冷戦構造の再現こそ、北朝鮮が米国と渡り合う上で必要としている環境だということに留意しなければならない。北東アジア地域での軍拡競争を回避するためにも、北朝鮮の核・ミサイル開発を封じ込めることが不可欠なのだ。

 この目的を達成するため、国連安保理の制裁強化決議を徹底して履行するのは当然だ。国連加盟国全てが責任ある態度で、制裁履行に真剣に取り組まなければならない。「抜け道」は存在しないことを北朝鮮に知らしめることが重要だ。

 今回の弾道ミサイル発射は、日本にもう一つの課題を突き付けた。日本人拉致問題の解決だ。北朝鮮が日本人拉致問題を認め謝罪した2002年9月17日の日朝首脳会談から15年を迎える。平壌に乗り込んだ小泉純一郎首相と金正日(キムジョンイル)総書記が署名した日朝平壌宣言には「国際法を遵守(じゅんしゅ)し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した」との項目が明記されている。

 弾道ミサイルを日本海の排他的経済水域(EEZ)に落下させたり、日本列島上空を通過させたりする北朝鮮の行為は、明白な宣言違反だ。日本はこの宣言もてこに、北朝鮮への独自のアプローチを検討すべきだ。

 会談を受け、蓮池薫さんら5人が帰国したが、横田めぐみさんら日本政府が被害者と認定した12人の行方や全容解明などは積み残されたままだ。核・ミサイル問題を巡る極度の緊張は長期化しているが、拉致問題を後回しにしてはならない。

 北朝鮮は核保有で「強国」になったと誇示、常に相手より優位な立場にあるとの認識を抱き始めている。日本との拉致問題でも、自分たちの主張を押し通せると考えているようだが、これこそ現実を無視した錯覚だ。

 被害者家族の高齢化が進んでいるという厳しい現実を前に、生存者の一日も早い帰国と家族らとの再会を実現するため、粘り強く多様な取り組みが求められる。(共同通信・磐村和哉)

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